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2022.11.09

転写因子Nrf2による糖尿病性腎臓障害の保護作用〜ストレス応答性転写因子Nrf2と糖尿病性腎臓病〜【プレスリリース】

発表のポイント

・ 自然発症糖尿病モデルマウスであるAkitaマウスと、転写因子Nrf2の遺伝子ノックアウトマウスを組み合わせた複合変異マウスの腎臓では、酸化ストレス、炎症、線維化が増加していることがわかりました。
・ Nrf2遺伝子ノックアウトAkitaマウスでは、血液中で尿毒症物質が増加し、腎臓の糸球体や尿細管が障害を受けるなど、糖尿病で引き起こる変化が悪化していることが明らかになりました。
・ Keap1の遺伝子改変によるNrf2活性化マウスとAkitaマウスを組み合わせた複合変異マウスの腎臓では、尿細管の変化が抑制されていました。Nrf2は糖尿病で引き起こる障害から腎臓を保護していることが明らかになりました。

概要

糖尿病性腎臓病は重症化すると血液透析導入の可能性もある重要な疾患ですが、進行を抑える治療が主流で本質的な治療法は存在しません。糖尿病では、酸化ストレスや炎症を原因とする腎臓の障害が知られています。Nrf2は、酸化ストレスを消去する因子の発現量を増加させ、炎症を引き起こす因子の発現量を低下させます。
東北大学東北メディカル・メガバンク機構の宇留野 晃准教授らのグループは、糖尿病モデルAkitaマウスとNrf2の遺伝子ノックアウトマウスを組み合わせた複合変異マウスの腎臓では、腎臓の糸球体の毛細血管および酸化ストレスが増加した尿細管が拡大し、血液中の尿毒症物質の濃度が上昇することを発見しました。AkitaマウスでNrf2を活性化すると、尿細管での円柱の形成が軽減することがわかりました。
現在、糖尿病性腎臓病に対する治療薬として、Nrf2を活性化する薬剤の臨床試験が進められています。本研究で得られた知見を利用することで、糖尿病性腎臓病の新しい治療法の開発が加速することが期待されます。この成果は、学術誌Redox Biologyオンライン版で2022年11月3日に公開されました。

プレスリリース本文

【図1】 腎臓における抗酸化分子グルタチオンの分布 質量分析イメージングによる、抗酸化分子グルタチオンの分布。糖尿病モデルであるAkitaマウスでは、腎臓の表面に近い皮質と呼ばれる領域でグルタチオンが多く分布していたが、Nrf2ノックアウトAkitaマウスでは、腎臓全体でグルタチオンが低下していた。

書誌情報

タイトル:Nrf2 deficiency deteriorates diabetic kidney disease in Akita model mice
日本語訳:「Nrf2欠損はAkitaマウスの糖尿病性腎臓病を悪化させる」
掲載誌:Redox Biology
掲載日:2022年11月3日
DOI:10.1016/j.redox.2022.102525
著者:
東北大学大学院医学系研究科医化学分野 Yexin Liu
東北大学東北メディカル・メガバンク機構 宇留野 晃、齋藤 律水、松川 直美、菱沼 英史#、三枝 大輔、山本 雅之
中南大学Xiangya Hospital Hong Liu

†東北大学大学院医学系研究科を兼任、#東北大学未来型医療創成センターを兼任、‡現所属先は帝京大学薬学部(東北大学東北メディカル・メガバンク機構を兼任)