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2022.03.08

近視の大きな成因である眼軸長に関連する新規の遺伝子座を同定 ~近視発症の病因解明へ~

東北メディカル・メガバンク計画の参加者3.3万人を対象に近視に関連する眼軸長のゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、31の遺伝子座1,478のSNPを特定しました。そのうち、7個の遺伝子座は今回新規に同定したものでした。この成果は、Ophthalmology Science誌のオンライン版に1月22日に掲載されました。

近年、世界的な近視人口の急増が報告されており、2050年には世界人口の半数が近視になるという試算もあります*1。特に、日本、東アジアと東南アジアで近視が多いとされています。近視眼では眼軸長(眼球の奥行き)が過剰に伸長して、角膜から網膜までの距離が長くなることが大きな原因の一つであり、遺伝的要因(生まれつきの素因)と環境要因の両方が関与すると考えられています。

今回、世代や性別による眼の構造の違いを解明し、日本人の眼軸長に関連する遺伝的変異を特定するために、詳細調査の眼科検査データを用いてGWASを行いました。

地域住民コホート22,379人および三世代コホート11,104人の計33,483人で、一塩基多型(SNP)と眼軸長の長さとの関連を評価しました。地域住民コホートの対象者では、眼軸長は右眼平均23.99 mmで左眼平均23.95 mmよりも有意に長く、この違いは性別や年齢を超えて見いだされました。また眼軸長は、若い世代ほど長く(近視が強く)、学歴の長さに相関することも明らかとなりました。GWASでは、両コホートでそれぞれゲノムワイドな重要性を持つ703と215の眼軸長関連SNPを明らかにし、メタ解析では、31の遺伝子座1,478のSNPを特定しました。 31個の遺伝子座のうち、5個は既知の眼軸長関連遺伝子座、15個は既知の屈折異常関連遺伝子座、4個は既知の角膜曲率関連遺伝子座でしたが、今回7個の遺伝子座を新たに同定しました。重要なことに、それらのいくつかは以前に同定された遺伝子座と機能的に関係がありました。また、眼軸長に関連する遺伝子が民族集団間において類似性と相違性ががあることを明らかにし、今後の近視の発症のメカニズム解明の一助になると考えられます。

*1. Holden BA et al, Global Prevalence of Myopia and High Myopia and Temporal Trends from 2000 through 2050. Ophthalmology. 123: 1036-1042, 2016.

書誌情報

タイトル:Genome-wide Association Study of Axial Length in Population-based Cohorts in Japan: The Tohoku Medical Megabank Organization Eye Study
著者名:Nobuo Fuse, Miyuki Sakurai, Ikuko N.Motoike, Kaname Kojima, Takako Takai-Igarashi, Naoki Nakaya, Naho Tsuchiya, Tomohiro Nakamura, Mami Ishikuro, Taku Obara, Akiko Miyazawa, Kei Homma, Keisuke Ido, Makiko Taira, Tomoko Kobayashi, Ritsuko Shimizu, Akira Uruno, Eiichi N.Kodama, Kichiya Suzuki, Yohei Hamanaka, Hiroaki Tomita, Junichi Sugawara, Yoichi Suzuki, Fuji Nagami, Soichi Ogishima, Fumiki Katsuoka, Naoko Minegishi, Atsushi Hozawa, Shinichi Kuriyama, Nobuo Yaegashi, Shigeo Kure, Kengo Kinoshita, Masayuki Yamamoto
掲載誌:Ophthalmology Science
Available online 22 January 2022
DOI:10.1016/j.xops.2022.100113