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2012.10.17

第15回インシリコ・メガバンク研究会開催のお知らせ(10月19日)

第15回インシリコ・メガバンク研究会を下記のとおり行いますのでご案内いたします。

・演題:次世代生物学の新たなモデルとしてのバキュロウイルス:

 “現在ある”遺伝子ネットワークを解き明かすための戦略と現状

・講師:佐藤昌直先生(自然科学研究機構基礎生物学研究所)

・概要:バキュロウイルスは真核生物細胞を使った組換えタンパク質発現として広く用いられている他、生物農薬(殺虫剤)としての利用もされている昆虫バイオテクノロジーの主要なツールの1つである。次世代シークエンサーによる網羅的解析と統計・数理モデリングによる大量データからの特徴抽出、システムの抽象(モデル)化が可能である現在、私はこれらのバキュロウイルスの有用形質の分子基盤を理解するという側面だけではなく、ネットワーク生物学、合成生物学研究のよいモデルとなる可能性に着目し、研究を進めている。

 バキュロウイルスは臨床で問題となる多くのRNAウイルスとは異なり、大型DNAウイルスである。宿主細胞の核にウイルスゲノムDNAが侵入し、感染に関する全てが転写から始まる系であり、ウイルス遺伝子機能発揮の最初の重要な情報をトランスクリプトームで収集することができる。また、大腸菌の複製起点をそのDNAゲノムに導入する事によって大腸菌内でのウイルスゲノムの維持・改変が可能であり、ゲノムが自由に改変可能で遺伝学的なアプローチも容易である上、ゲノムサイズが約130kbと‟合成可能”な大きさであるため、ウイルスゲノム配列をデザインする合成アプローチを視野に入れて研究を進めている。さらには、ウイルスゆえに短期間での進化実験も可能で、遺伝子ネットワークの進化という実験生物学の新たな課題にもチャレンジすることができる。

 本セミナーではこのうち、ウイルス遺伝子ネットワークの推定に関するトピックを紹介する。遺伝学、RNA-seqによるトランスクリプトーム、ネットワークモデリングを組み合わせたアプローチを用いて、カイコに感染するバキュロウイルスBmNPV-T3系統が持つ141遺伝子のうち、ウイルス感染に重要な役割を果たす40遺伝子を構成因子とする遺伝子ネットワークモデルを構築した。

現在、このモデルを検証している段階であるが、ネットワークモデル構築に至るまでに我々がRNA-seqに代表されるトランスクリプトームに何を求め、どう扱っているかを詳しく解説し、議論したい。

【参考文献】モデリング: Sato et al. (2010) PLoS Pathogens 6(7): e100101

バキュロウイルス逆遺伝学: Ono et al. (2012) Virus Research 165(2) 197-206.

開催概要

日時:平成24年10月19日(金) 15:00‐17:00

場所:東北メディカル・メガバンク機構2階会議室1