オムロン ヘルスケア社との共同研究(尿ナトカリ計)

オムロン ヘルスケア社との共同研究をもとにした成果が発表されました。ToMMoとオムロン ヘルスケア社は2017年5月より共同研究を実施しています。

自分で測り自分で創る健康社会へ ‐一人ひとりの日常生活のモニタリングと健康データの関連の解明を目指した5,000人規模の共同研究を開始‐【プレスリリース】

この共同研究をもとにした論文が発表され、尿ナトカリ比の複数日測定が家庭での高血圧を評価するための指標として、非常に有用である可能性が示されました。塩分(ナトリウム)の摂取は血圧を上昇させ、反対に野菜や果物に含まれるカリウムは、ナトリウムの排泄を促して血圧を下げることはよく知られています。近年、このナトリウムとカリウムのバランスを表す指標としてナトリウムとカリウムの比(ナトカリ比)が注目されています。

食事中のナトリウムやカリウムの大部分は尿に出ますので、尿を測定すればこのナトカリ比がわかるはずですが、尿は直前の食事などが大きく影響し、その時々で状態が甚だしく異なるため、24時間蓄尿という方法でなければ正確な尿ナトカリ比を測定することはできません。なお24時間蓄尿とは文字通り丸一日の尿を貯めることであり、その場ですぐに、そして簡単に尿ナトカリ比を測定することは困難でした。
ToMMoでは、2017年よりオムロン ヘルスケア社により開発された尿ナトカリ計を用い、長期健康調査に追加する方法で検査データの収集を行っています。この尿ナトカリ計は1回あたり1~2滴の尿で簡単に測定可能であること、また、既に任意の時間に採取する随時尿の複数回測定と24時間畜尿の測定結果に相関があることは明らかになっていたことから、簡単に測定可能な尿ナトカリ計を用いて、尿ナトカリ比を複数日にわたって測定することで高血圧とのより強い関連が示されるのではないかという仮説のもと、分析を行いました。なお、調査参加者の方には、尿ナトカリ計と共に血圧計も貸し出しており、同時期に両方の測定値を得ることができました。対象とした人数は朝晩2回10日間の尿ナトカリ比を測定した3,273人で、性別、年齢、BMI、飲酒状況の影響を考慮して解析を行いました。
分析の結果、1日分のみの尿ナトカリ比測定と比べて複数日にわたって測定することで高血圧との関連をよりよく示すことが明らかとなりました。現在のところ、この尿ナトカリ計は研究を目的とした機器ではありますが、一日中尿を測らなくとも、ナトリウムとカリウムのバランスが簡単に測定でき、更に尿ナトカリ比の複数日測定が家庭での高血圧を評価するための指標として非常に有用である可能性が出てきたのです。

病気の兆候を見つけたり治療方針を決めたりするために検査はとても重要なものです。ただ、検査によっては苦痛を伴ったり行動が制限されたりすることもあります。ToMMoの長期健康調査は、病気の原因や治療法を見つけるだけでなく、負担の少ない検査方法を見つけるためにも役立っているのです。

関連リンク

オムロンヘルスケア社との共同研究の論文(単日あるいは複数日測定の尿ナトカリ比と高血圧有病率との関連)がHypertension Research誌に掲載されました

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(2020年3月12日)