お知らせ

記事一覧
全て
ニュース
成果
プレスリリース
イベント
2026.04.30

全ゲノムシークエンスデータを用いた日本人CHIPの変異に関する論文が掲載

Clonal Hematopoiesis of Indeterminate Potential(CHIP:意義不明のクローン性造血)とは、血液をつくる造血幹細胞の一部に新たな遺伝子変化(体細胞変異)が生じ、その細胞が少しずつ増えていく現象です。このような現象は加齢とともに起こりやすくなることが知られています。最近の研究で、CHIPを持つ人では、血液がん、心血管疾患、生活習慣病などの発症リスクが高いことが分かってきました。一方で、CHIPは、がん細胞に生じた遺伝子変化と区別が難しく、がんの遺伝子検査の結果判定に影響を及ぼすことがあることが知られています。また、海外と比較して、日本人のCHIPにどのような特徴があるのかは、よくわかっていませんでした。

そこで、本研究では、東北メディカル・メガバンク計画を通じて収集された、住民49,982人の末梢血検体から得られた全ゲノムシークエンス(Whole-Genome Sequencing:WGS)データを解析し、既に報告されている方法に従って、CHIP変異が起こっている遺伝子と、その頻度を調べました。その結果、62遺伝子・1,019遺伝子座にわたる、合計1,503件のCHIP変異を同定しました。これらのうち、1,015遺伝子座・1,413件の変異は、これまでに報告されてきた従来の定義に合致するCHIPであり、正当な「CHIP変異(CHIP mutations)」と定義しました。一方で、4遺伝子座・90件の変異は、従来の定義には合致しないもののCHIPとしての特性を持っていることがわかり、本研究では「CHIP候補(CHIP candidates)」としました。

本研究では全体の約2.5%、つまり40人に1人がCHIPを持っていることがわかりました。ただし、年齢が高いほどその割合が高くなる傾向があり、40歳未満では50人に1人未満なのに対して、70歳を超えると20人に1人以上の割合に上がることがわかりました。
さらに、MONSTAR-SCREEN-2研究に登録された固形がん患者2,093人のゲノム解析データを用いた外部検証を行ったところ、クローン性造血の検出において、良好な陽性的中率(66%)および高い陰性的中率(76%)が確認されました。

本研究の成果により、日本人CHIPパネルとして医療機関で実装され、がんの遺伝子検査の診断の一助となり、ゲノム医療の推進につながることが期待されます。

書誌情報

タイトル:Population-Based Identification of Clonal Hematopoiesis Using Peripheral Blood Whole-Genome Sequencing in Japan
著者名:SungGi Chi, Ikuko N. Motoike, Takao Fujisawa, Yumi Yamaguchi-Kabata, Takahiro Nobukuni, Kengo Kinoshita, Yoshiaki Nakamura, Hideaki Bando, Takayuki Yoshino, Kinuko Ohneda, Katsuya Tsuchihara, Yosuke Minami, Riu Yamashita
掲載誌:Cancer Science
掲載日:2026年4月29日
DOI:10.1111/cas.70406