お知らせ
- 2025.09.25
量子暗号技術のゲノム医療への応用に関する論文が掲載
量子暗号の技術をゲノム医療に応用することで、大容量のゲノム解析データの伝送やバックアップ、機微性の高い内容のテレビ会議を安全に行える仕組みを開発した成果についての論文が、国際科学誌IEEE Transactions on Quantum Engineeringに掲載されました。
量子鍵配送(Quantum Key Distribution: QKD)を信頼できるノード間で行うQKDネットワークを中心とする量子暗号技術は、その高い安全性から金融・医療などさまざまな分野への応用が期待される技術です。これまで全ゲノム・全エクソーム解析情報のような大容量のデータでの応用事例がなく、ゲノム医療への応用のためのユースケースの創出が待たれていました。
今回、株式会社東芝(以下、東芝)とToMMoの共同研究により、QKDネットワークに秘密分散技術を組み合わせて、1. ゲノム解析データのリアルタイム伝送、2. オンラインビデオ会議の実施、3. ゲノム解析データの分散バックアップを実現し、評価しました。
東芝とToMMoは、上記の実現のために、大規模データの安全な伝送を実現するための、出力データの監視と暗号化/復号および伝送のパイプライン処理機能、大規模データ伝送と遅延の少ない通信の両立を可能にする鍵管理システム機能、秘密分散方式による高速データ転送と分散バックアップを実現する、鍵データの先読みおよびストレージへの直接アクセス機能を開発しました。また、評価では実際にゲノム解析データを約7kmの距離を伝送し、リアルタイムでデータ伝送が行えることを確認するなどしています。
今回発表された技術は、今後、ゲノム医療が普及していく中でさまざまなシーンで応用されていくことが期待されます。
書誌情報
タイトル:Quantum Key Distribution Network and Quantum Secure Cloud Technologies for Genome Medicine use-cases
著者名:Yoshimichi Tanizawa; Akira Murakami; Ririka Takahashi; Kazuaki Doi; Mamiko Kujiraoka; Hideaki Sato; Muneaki Shimada; Nobuo Yaegashi; Shogo Shigeta; Yasunobu Okamura; Kengo Kinoshita; Fumiki Katsuoka; Inaho Danjoh; Fuji Nagami; Masayuki Yamamoto; Mikio Fujiwara
掲載誌:IEEE Transactions on Quantum Engineering
掲載日:2025年9月17日
DOI:10.1109/TQE.2025.3611335