お知らせ
- 2025.09.12
健康的生活習慣と遺伝的リスクの相互作用が腎機能低下リスクに及ぼす影響を検討した論文が掲載
健康的な生活習慣と遺伝的リスクの組み合わせが腎機能低下リスクに与える影響を検討した論文が、国際科学誌 Clinical Kidney Journal に掲載されました。
慢性腎臓病は遺伝要因と生活習慣が複雑に関与する疾患であり、その予防や早期介入のためには生活習慣の改善効果と遺伝的リスクとの相互作用を明らかにすることが重要です。近年、多数の遺伝子情報を基にしたポリジェニックリスクスコア(PRS)が開発され、遺伝と生活習慣の相互作用についての検討が可能になってきました。そこで本研究では、慢性腎不全に対するPRSと生活習慣の相互作用について検討しました。
本研究は東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホートのうち、ベースライン調査時(2013年から2017年にかけて実施した1回目の健康調査)に慢性腎不全と診断されていなかった20歳以上の12,680人を対象に行いました。BMI、尿中Na/K比、喫煙、飲酒、身体活動に基づいて生活習慣スコアを作成し、推算糸球体濾過量に基づくPRSを組み合わせて、腎機能低下の発症リスクを評価しました。腎機能低下は詳細二次調査で推定糸球体濾過量が60.0mL/分/1.73m2未満として評価しました。平均4.4年間の追跡期間中に123人で腎機能低下が認められました。解析の結果、不健康な生活習慣は全ての遺伝的リスク群において腎機能低下のリスク上昇と関連しました。特に、中等度の遺伝的リスク群で生活習慣スコアが中間的な場合にリスクが高いことが示されました。PRSを生活習慣モデルに加えることで予測精度はわずかに向上しましたが、有意差は認められませんでした。
本研究により、健康的な生活習慣は遺伝的リスクにかかわらず腎機能低下リスクを軽減することが示されました。遺伝子情報と生活習慣の統合はリスク層別化の可能性を広げますが、臨床応用にはさらなる検証が必要です。
書誌情報
タイトル:Effect of Healthy Lifestyle on Renal Dysfunction Risk: Interactions with Genetic Risk
著者名:Masato Takase, Naoki Nakaya, Mana Kogure, Rieko Hatanaka, Kumi Nakaya, Ippei Chiba, Sayuri Tokioka, Kotaro Nochioka, Tomohiro Nakamura, Naho Tsuchiya, Takumi Hirata, Ikumi Kanno, Akira Narita, Taku Obara, Mami Ishikuro, Hisashi Ohseto, Ippei Takahashi, Akira Uruno, Tomoko Kobayashi, Eiichi N. Kodama, Yohei Hamanaka, Masatsugu Orui, Soichi Ogishima, Satoshi Nagaie, Nobuo Fuse, Junichi Sugawara, Shinichi Kuriyama, Koichi Matsuda, Yoko Izumi, Kengo Kinoshita, Gen Tamiya, Atsushi Hozawa, Masayuki Yamamoto, and the ToMMo investigators
掲載誌:Clinical Kidney Journal
掲載日:2025年9月9日
DOI: 10.1093/ckj/sfaf275