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2015.06.10

震災後2年目の太平洋沿岸部で継続して高い抑うつ傾向~地域住民コホート調査の第二次報告~【プレスリリース】

東北大学東北メディカル・メガバンク機構(機構長:山本雅之、以下、ToMMo)は、宮城県での地域住民コホート調査参加者のうち、平成25年度に特定健診会場で協力した約7千人分について分析しました。分析から、県内全体で28%の調査参加者に抑うつ症状がみられ、4%でPTSRの疑いがもたれました。調査参加者のうち、沿岸部の住民は内陸部の住民と比べて、これらの有病率*1が高い傾向がみられました。ToMMoでは、特に心理的な指標で問題を抱えた方々に対して、心理士による電話や面談による支援を行っており、支援実施は延べ600人以上にのぼっています。
また、既に報告されている震災後急増した心不全による入院*2の影響から、増加が懸念されていた潜在性心不全(NT-pro BNP*3高値者)の割合やヘリコバクター・ピロリ菌の感染者の割合に内陸部と沿岸部で差がないことが明らかになりました。
今後、コホート調査の結果の分析をさらに進め、震災後の住民の心身の健康に影響を及ぼしている身体的・心理的・社会的な諸要因を明らかにし、支援や復興策の充実に結びつけていきたいと考えております。

用語解説
*1 有病率:疫学において、集団における疾病などの割合をあらわす指標で、以下の式であらわされる。
  有病率=有病数/観察母集団の大きさ
率と表現されるが実際には割合である。
本稿において「有病」とは、コホート調査において心身の不調を示す数値等が一定の基準以上となった状態を指しており、医療における診断を経た疾病への罹患状態とは異なる。
*2 震災後急増した心不全による入院:東北大学大学院医学系研究科の下川宏明教授らのグループは、2012年8月に東日本大震災による心血管疾患の増加について報告している。詳細は東北大学大学院医学系研究科から2012年8月28日付で報道発表されている。
*3 NT-proBNP :N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド。心臓から生成・分泌される物質で、心筋のストレスに応じて増加することから、心不全のスクリーニングにも用いられている。本人が無自覚な潜在性の心不全の早期発見が期待される。

プレスリリース本文(PDF)

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