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第8回 巨大なゲノムを持つウーパールーパーを読み解く

ヒトのゲノムは約30億の塩基対からなりますが、ウーパールーパーという名で一躍人気を博した体長わずか25cm程のメキシコサラマンダー(アホロートル)は、なんとヒトの10倍以上の約320億もの塩基対からなっています。彼らは手足を切断しても同じ機能を再現できるほどの驚異の再生能力をその小さな身体に秘めているのですが、ゲノムの巨大さゆえなかなか研究されてきておらず、未だ謎が多いのです。

一方で、ヒトは世界各地で全ゲノム解析が行われており、だいたい一人当たりの全ゲノム解析にかかる時間は丸2日間です。では、巨大なゲノムを持つウーパールーパーの全ゲノム解析はどのくらい時間かかると思いますか?ヒトの約10倍の塩基対なので20日間でできるのでしょうか?実際には単純に10倍の時間をかければいいわけではなく、その何倍、何十倍もの時間がかかるのです。でも、それはなぜなのでしょうか?

現在ヒトゲノムのシークエンス解析で広く用いられているのは「短鎖型」と呼ばれていて、長いゲノム配列を細切れにし、お手本となる基準ゲノムと照らし合わせて解読するものです。しかし、ウーパールーパーにはそもそもお手本がありませんでした。そこで、より長く読める最新の長鎖型シークエンサーが解読に一役買い、2018年にドイツの研究グループがウーパールーパーの全ゲノム解析に成功しました。

完成図なしにパズルのピースをそろえるのが難しいように、ゲノムにもお手本となるものがないと困難を極めます。また、単純にゲノムを読むだけでは完全に解読することはできず、複数の手法を組み合わせるなどして解析を重ねるため、全て解読するまでには相当の時間を要するのです。

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