未知のなかば 道なき未知

pickup

第1回 MRIが認知症の予防に

自分の脳は肉眼で見ることができませんが、機械を使えば映像にして見ることができます。方法はいくつかありますが、中でも人気があるのはMRIです。

MRIといえば、下のような脳の断面(二次元)を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか(写真1)

brain
写真1

実はこのような画像を撮ることだけが、MRIの使い道ではありません。立体(三次元)的なデータを集めたり(動画1)、時間とともに体が変化していく様子を追ったりすることができるのです。例えば血液の流れが複雑に変化するさまをとらえることができるので、それを利用して病気の診断に使われています。

クリックして、動画でMRIデータを見てみよう!


動画1

今、「MRIを中心にしたデータベース」が医学を進歩させるとして、期待が集まっています。これは大勢の人の遺伝子や生活習慣、病歴等そしてMRIのデータを集めて分析できるようにした仕組みです。この仕組みは、未来に何をもたらすのでしょうか?それは認知症の予防ができる時代の幕開けです。
脳の発達や老化の研究では、データベースを使うことにより、重要なことがわかってきました。脳は老化すると部分的に縮んだり体積が減ったりすることが知られていますが、認知症やアルツハイマー病では認知力が下がってくるよりも前に、脳が一部縮んで体積が減ります。この変化はMRIで観察でき、血の流れが変化する様子も映ります。この事を利用すれば、認知症やアルツハイマー病の発症の予兆をMRIで先取りして、予防法を実行したり薬を飲んだりと先手が打てるようになるでしょう。実際に予防できるようになるまでには、さらに大勢の人からデータを集めて研究しなければならないのですが。
これはデータベース応用の一例にしかすぎません。大量のデータが一つのデータベースにまとまれば、遺伝子や生活習慣と病気の間にある関係について研究が進むと言われています。そして「脳の老化を防ぐには何に気をつけて生活すればよいのか?」をつきとめる研究ができるでしょう。
その有用性のために、MRIを中心としたデータベースは世界中で研究プロジェクトに組み込まれるようになってきました。例えばドイツのナショナルコホート、イギリスのUKバイオバンク、オランダのジェネレーションRでは、数万人がMRIの撮影台に上がってデータベースの充実に協力しています。
日本ではToMMoが2014年夏からMRIを健康調査に取り入れ(仙台センターにて)、データベースを作ります。それによって脳の研究が進み、認知症を予防できる時代の扉が開く日が近づくかもしれません。

写真1:MRIで撮影した脳の断面(3枚)
© 2014  Taki Laboratory All rights reserved.

動画1:21世紀、技術の発展によりMRIは変わった。今は三次元データをかんたんに視覚化できる。その映像はダイナミックで色彩豊かだ
© 2014  Taki Laboratory All rights reserved.

関連リンク

(担当:影山麻衣子)

道なき未知 記事一覧