調査票情報の使い方あれこれ ~三世代コホート調査 妊婦の朝食摂取頻度情報をもとにした研究成果のご紹介~

ToMMoの健康調査で実施している調査票(アンケート)にはたくさんの項目があり、色々な研究に活用することができます。今回は調査票を活用した研究成果のひとつをご紹介します。

調査票に「朝食は、どれくらいの頻度で食べますか?」という質問があります。健康調査参加者は「毎日食べる」「週に3~4回」などの選択肢から自分に当てはまるものを選びます。今回ご紹介する研究成果では、この朝食摂取頻度と妊娠高血圧症候群との関係を解析しました。
対象としたのは三世代コホート調査に参加された妊婦さんです。妊婦さんが回答した調査票情報から、解析に必要な有効な情報が得られたのは18,786人でした。この方たちを、朝食を食べる頻度で「毎日」「週5~6回」「週3~4回」「週0~2回」の4群に分け、妊婦健診のデータから特定された妊娠高血圧症候群との関連を調べました。その結果、週に0~2回しか朝食を食べない妊婦さんは毎日食べる妊婦さんと比べて、妊娠高血圧症候群になるリスクが1.35倍高いことがわかりました。
詳細は下記の発表論文情報をご覧ください。
三世代コホート調査をもとにした「妊婦の朝食欠食と妊娠高血圧症候群」に関する論文がNutrition Journal誌に掲載されました

この研究はひとつの例で、他にも色々なバリエーションが考えられます。今回は妊婦健診の結果を組み合わせましたが、たとえば以下のように、児の出生体重との関連を解析した研究成果もあります。
三世代コホート調査をもとにした「妊婦の朝食摂取頻度と児の出生体重」に関する論文がBMC Pregnancy and Childbirth 誌に掲載されました
他にも、朝食ではなくて他の生活習慣に着目する、等々色々な研究が考えられます。

調査票に色々な項目があることは、組み合わせのバリエーションが増えるという以外にも良い点があります。
例えば、朝食を食べないのはつわりが重かったからで、本当は朝食ではなくつわりが妊娠高血圧症候群に深く関係しているのではないか、という仮説があったとします。ToMMoではつわりの有無についても調査しているので、その影響を極力除外したうえで解析することができました。このため、つわりとは関係なく朝食欠食と妊娠高血圧症候群との間には関係が認められる、ということを結論付けることができたのです。今回の研究では他にも、年齢・BMI・世帯収入・喫煙・飲酒・出産歴・妊娠糖尿病・不眠症・栄養摂取量との関係を考慮したうえで解析を実施しています。このように他の影響を除外することを「調整」と呼んでいます。調査項目がたくさんあれば、調整可能な項目も増えます。調整を行ってようやく今回の成果のようなエビデンスが得られるのです。

なお調査票の内容はこちらから確認することができます。
調査票の情報を活用した研究を希望される方は、試料・情報の利活用/分譲・共同研究 をご覧ください。

(2023年5月8日)