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2018.01.22

ゲノム解析部門が協力した、脳組織中の体細胞変異を検出し精神神経疾患の発症との関連を調べた研究成果が、Psychiatry and Clinical Neurosciences誌に掲載されました

ゲノム解析部門の安田教授、長崎教授、勝岡准教授らは、東京大学、理化学研究所、熊本大学と共同で、次世代シークエンサーを用いた脳組織の全ゲノム解析を行い、その成果をPsychiatry and Clinical Neurosciences誌に報告しました。
 
脳組織の体細胞変異*は脳の機能的多様性ならびに精神神経疾患の発症に関連するとされています。しかし、可塑性のないヒト脳組織での体細胞変異の報告は少なく、探索も困難でした。今回、東京大学、理化学研究所、熊本大学、および当機構の共同研究で健常人3名の脳組織由来のゲノムDNAを平均深度100倍で解読しました(高精細解読で30倍なのでさらにその3.3倍)。このような超高精細解読によって、わずかに存在する脳組織中の体細胞変異を検出しました。3名分で31カ所の体細胞変異を検出し、これらが神経細胞で発現している遺伝子に集中していることを見出しました。この共同研究によって、脳組織での体細胞変異が精神神経疾患の発症に関連することが示唆されました。この研究でのゲノムDNA解読の一部は当機構の次世代シークエンサーによって実施されました。

【用語解説】
*体細胞変異:身体を構成する細胞一つ一つの中で発生するゲノムDNAの変異。個体を作るもととなる生殖細胞系列変異とは異なり、身体の一部の細胞にのみ認められる。がん組織などで高頻度に観察される。

【論文名】
Identification of somatic mutations in postmortem human brains by whole genome sequencing and their implications for psychiatric disorders
「全ゲノム解析による脳組織での体細胞変異の同定と精神神経疾患発症との関連」

【掲載誌】
Psychiatry and Clinical Neurosciences

【著者】
Masaki Nishioka, Miki Bundo, Junko Ueda, Fumiki Katsuoka, Yukuto Sato, Yoko Kuroki, Takao Ishii, Wataru Ukai, Shigeo Murayama, Eri Hashimoto, Masao Nagasaki, Jun Yasuda, Kiyoto Kasai, Tadafumi Kato, Kazuya Iwamoto
doi: 10.1111/pcn.12632