河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第47回

妊婦さんの食事と赤ちゃんの健康/総合的な調査進め検証

2016年2月17日 掲載
 佐藤ゆき

食べ過ぎてなんだかだるいな、食べたら元気になったなど、食事と体の関係については、ふだんから感じることが意外と多いと思います。特に妊婦さんでは、ご自身の体重管理や生まれてくる赤ちゃんのことを考えて、食事の内容に気を使う方もいらっしゃるでしょう。
妊娠中は食べた方が良いとか、悪いとかという情報に敏感になり、食べることそのものにストレスを感じることもあるかもしれません。昨今、雑誌やインターネットを通してあらゆる情報が入手できる時代ですので、その情報の確からしさを知ることも重要になります。厚生労働省は、蓄積されてきた学術調査を元に、「日本人の食事摂取基準」や「妊産婦のための食事バランスガイド」を作成し、妊娠中に必要な栄養素や料理例の情報を出しています。食事内容や栄養についての悩みがあれば、産科医療機関の栄養士さんや自治体の栄養相談の窓口に尋ねてみるのもよいかもしれません。
妊娠中の食事と子どもの健康に関する研究では、食品に含まれる特定の成分あるいは栄養素の過剰摂取や過少摂取の影響に着目し、子どもが生まれる時点までを一つの区切りとしてきました。今、学術研究の世界では欧州を中心に、母体の栄養状態と子どもが大人になった時の健康を含めた、長期的で大規模な検証が進められています。
しかし食文化や遺伝的背景が異なる日本人に、その結果が当てはまるとは限りません。日本では東北大の三世代コホート調査や環境省のエコチル調査をはじめ、母子を中心とした総合的な調査が行われていますので、その成果が待たれます。
 
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