河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第12回

環境と身体の関係を解き明かすアレルギー研究/生活習慣の変化が影響

2014年8月20日 掲載
鈴木洋一

アレルギーが関係する病気には気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、通年性アレルギー性鼻炎、花粉症、食物アレルギーなどがあります。これらの病気の原因は、アレルギー性疾患として共通なメカニズムの部分と、それぞれの病気の症状が起こる場所(臓器)に関わるメカニズムの部分に分けて考えることができます。
アレルギーとは、微生物や大気汚染物質など外部からの進入者に対しての防御反応が必要以上に起こってしまうことです。特に、免疫グロブリンE型(IgE)が関わる反応が重要です。体は外部からの進入者の形に合わせてIgEを作りますが、これを作りやすい人とそうでない人がいます。作りやすい体質を「アトピー体質(あるいは、アトピー素因)」と言っています。
アトピー体質、ぜんそくは遺伝しますか?という質問をよく受けます。遺伝の要素も確実にありますが、それだけでは決まりません。生活習慣病である高血圧、糖尿病なども同じです。遺伝でない部分は何で決まっているかというと、多くの生活や環境の因子が関わっています。
この半世紀の間、アレルギー性疾患は非常に増えましたが、その理由の多くが生活・環境因子で説明できます。まず家畜、植物、土に触れていた農家の環境から、それらがない環境での生活への変化。食事の西洋化、住宅の高気密化、大気汚染、食品中の添加物や化学物質、肥満、呼吸器ウイルス感染症も挙げられます。一般に、都会的な環境とライフスタイルがアレルギー性疾患発症の面から良くないことが分かっています。
アレルギーに関係する遺伝子の個人差(遺伝子多様性)は、数十個以上あるようです。まだ遺伝子と環境要因がどのように関係しているのかは、ほとんど分かっていません。これは、今後の疫学研究の重要なテーマです。

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