河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第62回

少ない服薬でより効果的な治療が可能に/週1回1錠 糖尿病薬も  

2016年10月5日 掲載
児玉栄一

病院で処方される薬は、たいてい食事に合わせて1日3回飲むものだと思っていませんか? 最近、1日1回の薬が増えていることに気付かれた方も多いと思います。高血圧症や高脂血症といった生活習慣病の薬でも1日1回になりつつあります。昨年から1週間に1回1錠を飲むだけで血糖をコントロールできる画期的な糖尿病薬が処方できるようになりました。薬の飲みやすさとその効果は進化しています。
1日3回の薬は、食事間隔を8時間置きにしないと、体内の濃度を保てず、効果がばらつく可能性があります。例えば7時に朝食、12時に昼食、19時に夕食なら、間隔は5時間、7時間、夕食後は翌朝まで12時間になり、就寝中、薬の効果は下がってしまいます。
その点、1日1回の薬の濃度は比較的安定しており、効果も24時間持続します。例えば高血圧症では一日中正常血圧を保つことができます。便利なだけでなく、高血圧による脳卒中や心筋梗塞などの予防が、より効果的になりました。
インフルエンザでも1回の吸入だけで、効果が5日間程度持続する薬が既に使われています。慣れないときちんと吸入できているか不安を感じるものですが、病院や薬局での指導の下、吸入すれば期待通りの効果が出るので心配要りません。
生活習慣病などの慢性的な病気に対してはさらに、1回の注射で1カ月間効果を示すような薬も開発されつつあります。東北大でも、副作用が少ないだけでなく、効果や利便性に優れた薬を開発しようと研究開発を進めています。

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