河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第60回

高血圧のガイドラインとの付き合い方/健康長寿に生かす指標

2016年9月7日 掲載
 三島英換

高血圧は身近な病気ですが、脳卒中や心臓病、腎臓病などの危険因子になるため、医師向けに高血圧の治療ガイドラインが作成されています。ガイドラインは5年ごとに見直され、世界中の研究結果を踏まえて改訂のたびに少しずつ変化してきました。最新の2014年版では、合併症のない場合、病院で測定の血圧で140/90mmHg未満、家庭血圧で135/85mmHg未満を一つの目標としています。
しかし、より低い血圧での管理が良い人もいれば、過度の降圧が逆に良くない病態を起こすケースもあります。ガイドラインはさまざまな患者さんを平均的集団と考えた場合の血圧目標であり、一番良い至適血圧は人によって恐らく異なります。そのため医師側はガイドラインを基にした上で、個々の患者さんの病状や合併症に応じて目標血圧や治療法を考えます。また、人はおのおの異なった遺伝子を持っており、この少しの違いは血圧を下げる薬の効き目や副作用、脳卒中や腎臓病を将来起こす可能性などにも影響することが分かってきました。今後遺伝子を調べることで、その人にベストな高血圧の治療を行う個別化医療が期待されています。
高血圧の治療により脳卒中などの危険性を減らすことができますが、血圧を過度に気にすることはストレスになり、かえって血圧を上げてしまう要因にもなります。血圧は元気に長生きするための一つの指標としてうまく付き合っていくことが大事です。9月30日から仙台で開かれる高血圧学会総会では、市民公開講座として高血圧と減塩についての講演もあります。ぜひご参加ください。

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