河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第54回

フッ化物を使った効果的な虫歯予防/歯磨き後うがいは軽く

2016年6月1日 掲載
 松井裕之

「虫歯予防にはフッ素入り歯磨き粉がよい」というのは誰しも耳にしたことがあるでしょう。虫歯は虫歯菌が糖を食べて酸を作り、これが歯の成分・アパタイトを溶かす「脱灰」により起こります。初期の虫歯では、脱灰したアパタイトが歯に戻る「再石灰化」と呼ばれる性質があります。フッ素、正しくはフッ化物を含むアパタイトは再石灰化を起こしやすく、いったん歯に戻ると次には脱灰しにくいため、歯の表面が強いアパタイトに置き換わって虫歯に強くなります。つまり、再石灰化時にフッ化物がお口の中にあることが重要です。
ところが、歯磨きの後に何回もうがいをすると歯磨き粉に含まれるフッ化物が流れ去ってしまいます。歯磨き後に汚れを吐き出した後、仕上げのうがいはごく少量のお水で1回だけにし、その後しばらく飲食をしないことで再石灰化効果が高まります。
一方、飲料水にフッ化物が添加されている国・地域の報告から、フッ化物は幼少時に過剰摂取すると健康被害を及ぼすことが明らかになっています。虫歯予防はしたいけど、健康被害は避けたいというのが正直なところです。科学的根拠のある治療を推進する国際プロジェクト、コクラン共同計画によれば、「6歳未満の小児の歯磨き粉のフッ化物濃度は1000ppm未満にすること」が推奨されています。現在、国内で販売される歯磨き粉の多くは大人用でも950ppm前後です。また、子ども用のフッ化物添加ジェルでは100~500ppmのものも市販されていますので、それらを少量使用していくのもよいでしょう。

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