河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第20回

データベースがもたらす、医学・生命科学の進歩/日本構築や運営に貢献

2014年12月17日 掲載
 山下理宇

生命医学研究の現場では、さまざまなデータが使われています。患者さまの臨床情報、過去の研究者がどのような論文を書いたか、実験の結果など、多種多様でしかも膨大なデータがあることが容易に想像できると思います。そして、これらの情報のうちよく使われるものを、他の人にも使いやすいようにまとめたものが生命医学データベースです。それらのほとんどは英語で作られ、世界中からインターネットで簡単にアクセスすることができます。
例えば、PubMedと呼ばれるものがあります。これを調べると、過去にどの研究者がどんな研究や報告をしたのかが分かりますので、自分の研究の参考にすることができます。また、染色体のどこにどのような遺伝子があるかをまとめたゲノムブラウザと呼ばれるものもあります。これは、病気の原因になりそうな遺伝子を探したり、ヒトと他の生き物のどこが似ているかを調べたりするのに役立ちます。現在、生命医学に関わるデータベースは数千にものぼると言われています。
このたくさんのデータベースの中から、自分の調べたい情報を検索するのはかなり大変な作業です。現在では、データベースを統合することや、いくつものデータベースを横断的に検索できるようなデータ形式の統一化が重要な課題になっています。そのためには、国際的な連携が不可欠で、毎年そのための会議が開かれています。実は、その国際会議が今年の11月に仙台と松島で行われ、第一線で活躍している研究者約80人が世界中から集結しました。日本からも主に若手の研究者が参加し、データの表現方法などいくつかの重要な約束事がここで決められました。
医学や生命科学に関わるデータベースの構築や運営は日本の貢献が非常に大きな分野です。今後の日本の研究者の活躍にご注目ください。

リレーエッセー医進伝心 一覧