GWAS解析結果をショーケースに

高血圧、糖尿病、がん等の疾患、さらに身長や体重・・・こういった遺伝と環境の両方の要因が絡み合って起きる事象に対する解析手法のひとつ、それがGWAS(ゲノムワイド関連解析:Genome-wide association study)です。しかし「何か良いものであるらしい」とは思っていても、今ひとつ活用のイメージがわかない研究者も多いのではないでしょうか?

※そもそもGWASとは何か? と思われた方は「第10回 水槽に隠された複数の謎を解き明かす ~ゲノムワイド関連解析(GWAS)による原因遺伝子探索~」をご覧ください。

ToMMoとIMMは、コホート調査で収集されたさまざまな健康関連項目に対してGWASを実施した結果をショーケースGWASとして公開しました。
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このショーケースGWASを公開するにあたり、まずデータの規模や特性、集団構造などを考慮して、解析プロトコル(標準パイプライン)を開発しました。このプロトコルに基づき、コホート調査の項目(身長、体重、血圧、肝機能、アンケート結果、等々)に対してGWASを行いました。
例えば、身長のショーケースGWASは こちら になります。一番上に表示されるプロット図(マンハッタンプロット)に、何本か突出しているものがあるのがわかります。この図の横軸は、遺伝子変異を染色体上の位置の順番に並べたもので、突出しているところが身長と関連が高い変異となります。

身長のショーケースGWASのマンハッタンプロット

この方法とは反対向きの方法で、特定の変異がどの健康調査項目で突出しているかを一覧で表示することもできます。

GWASを利用すれば、比較的たやすく関与する遺伝子の検討が可能です。GWASを実施するためには大量のゲノム解析結果が必要ですが、東北メディカル・メガバンク事業には対照となる解析データが準備されています。

では、このような解析結果の公開が一体何の役に立つのでしょうか?

実は、今、世界的には、多くの民族集団から、このような結果要約データを統計的に集めて分析することで、世界中の人々を病から救おうとする研究が進んでいるのです。精密医療の先端では、過去の民族集団間の不均衡・不平等を解消することが、結局は世界全体の集団の利益となることが明らかにされつつあるのです。

まずは一度、ショーケースGWASにアクセスしてみてください。新しい研究の扉が開くきっかけになるかもしれません。

(2021年10月15日)

関連リンク

ショーケースGWAS(表中の TGA000007/TGA000008/TGA000009)

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