近視の要因の一つである眼軸長に関する論文を発表

近視は、眼軸の延長に加え、角膜形状、水晶体の屈折力の変化により網膜への結像が障害される(ピントが合う位置が網膜より前になっている)状態です。特に、眼軸の長さ(眼軸長)は近視と深く関連しています。近視は特に、日本、東アジアと東南アジアで多いといわれており、遺伝的要因(生まれつきの素因)と環境要因の両方が関与すると考えられています。

今回、ToMMoは世代や性別による眼の構造の違いを解明し、日本人の眼軸長に関連する環境要因と遺伝的要因について評価した結果を論文で報告しました。対象は、地域住民コホート調査参加者22,379人(平均年齢61.82±12.38歳)および三世代コホート調査参加者の成人11,104人(平均年齢42.67±13.64歳)の計33,483人です。

地域住民コホート調査参加者では、眼軸長は右眼で有意に長く、この違いは性別や年齢を超えて明らかでした。また眼軸長は、身長、就学歴の長さ、家族歴、眼圧と正の相関がありましたが、年齢は負の相関を示しました。この関連性は、三世代コホート調査参加者でも明確に再現されました。ゲノムワイド関連解析(GWAS)では、地域住民コホートでは703、三世代コホートでは215の眼軸長に関連する一塩基多型SNPを明らかにしました。また、メタ解析では、眼軸長に関連する31個の遺伝子座を特定し、そのうち7個が新たに同定されたものでした。さらに、眼軸長に関連する遺伝子が民族集団間において類似性と相違性があることが明らかになりました。詳しくは下記の論文をご参照ください。

Fuse Nobuo, et al. Genome-wide Association Study of Axial Length in Population-based Cohorts in Japan. Ophthalmology Science. 2022; 2 (1): 100113. doi:10.1016/j.xops.2022.100113

国内において、このような大規模での眼軸長に関する調査の例はありません。また、ToMMoでは2017年から子どもの眼軸長も本格的に調査しているため、今後の近視の発症メカニズムおよび病態の解明につながることが期待されます。

関連リンク

2022.03.08 近視の大きな成因である眼軸長に関連する新規の遺伝子座を同定 ~近視発症の病因解明へ~

(2022年3月25日)