河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第40回

震災と母子の健康を守る保健医療/妊婦への長期支援必要

2015年10月21日 掲載
 石黒真美

地震大国と呼ばれる日本では、1995年に阪神大震災、2011年には東日本大震災が発生し、甚大な被害がもたらされました。震災後、避難所や仮設住宅での生活などで、普段とは異なる環境に身を置かれた方も多くいらっしゃいます。このような間接的要因も含めた大規模震災の影響によって、持病を悪化させる人や、新たに病気を患う人の増加が懸念されています。中でも、妊婦さんやお子さんなどは震災による健康面への影響が心配されます。
最近の研究では、被災地に住む妊婦さんの血圧が、震災直前の朝と比べ、震災の翌朝には明らかに上昇したことが報告されています。また、妊婦さんが精神的なストレスを抱えることは、おなかの中のお子さんの健康状態にも影響します。さらには、震災前に生まれ、特に津波を経験したお子さんは、何らかの病気にかかっている割合が高いことが分かり始めています。
震災の経験が実際にどの程度健康状態に影響しているのか、今後注意深く調査を行い、適切なサポート体制を整えることが必要です。特に妊婦さんに対しては、お子さんも含め、産後も長期にわたって支える保健医療が求められます。また、将来の大規模な災害時には、さまざまな病気の増加や症状の悪化を防ぐ対策を立てられるよう、日頃から妊婦さんやお子さんがどのような病気にかかりやすいのかを把握することも重要です。
阪神大震災から20年余、東日本大震災から4年7カ月が経過してもなお、多くの方が復興に向けて取り組んでおり、生活の土台となる「健康」づくりも大切にしていきたいと感じます。
 
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