河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第31回

子どもの未来を考えたメディアとの関わり方/言語能力の発達に影響

2015年6月3日 掲載
 小林朋子

隣り合って座る親子が全く会話を交わすことなく、スマホを操作している光景を電車内で目にします。この光景に違和感を持つのは私だけでしょうか? テレビに始まり、テレビゲームやパソコン、最近ではスマホやタブレット端末といった電子メディアが急速に普及しています。子どもは幼少期から、長時間、電子メディアと接する傾向にあります。子どもの発達にどのような影響が及ぼされるのか、世界中で調査されています。
テレビについては、2歳以下の子どもには長時間見せないようにとの日本小児科学会からの提言が2004年に出されました。映像メディアからの一方的な働き掛けだけでは、子どもの言語能力が発達しないことが分かったからです。では、3歳以上、テレビ以外のメディアに関してはどうなのでしょうか?
アメリカ小児科学会では、2歳以下の子どもに対してはテレビ以外のメディアについても使用を避けるべきだとの提言を11年に出しましたが、3歳以上については利用の仕方次第との考えを示しています。14年度の文部科学省による全校学力・学習状況調査では、メディア接触時間が短いほど学力テストの正答率が高いこと、学校でもメディアを活用した授業が行われていることが分かりました。
他者と直接会話をし、体を動かす体験は、将来子どもが良い人間社会を築くために重要です。もはやメディアなしの生活は考えられない現在、仮想現実であるメディアに費やす時間が長くなるために、子どもの現実世界での体験が減っていくことに対して、われわれ大人は対処する必要があると考えます。

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