河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第69回

健康は誰がつくるのか/未来に役立つ個の情報

2017年2月1日 掲載
長神風二

本欄は次回で最終回を迎えます。これまで約70回にわたって取り上げてきた最先端医学の姿は、どのようなものだったでしょうか? 多くの人の健康を長期にわたって調べる「コホート調査」、その調査で提供を受けた血液やデータをしっかりと保管する「バイオバンク」、血液などから膨大な情報を引き出す「ゲノム解析」、スーパーコンピューターを駆使して膨大な情報を読み解く「インシリコ解析」。これらは、一見近寄りがたい高度なことのようで、スタートは全て、一人一人のアンケートや血液であったりするのです。
こうした大規模な医科学研究を通じて導き出される結果は、適度な運動や塩分を控えること、規則正しい生活といったよく聞く当たり前のことだったりします。この当たり前は、「長生きしたご近所さんはこうだった」「早くに亡くなった親戚はああだった」といった長年の経験や伝聞が積み重なった結果でした。最先端の科学は、ライフスタイルが激変し続け長年の知恵の蓄積がままならない現代社会の中で、多くの人たちの協力を得て、さらに高度な機器の力も借り、数年から数十年の単位で知見を出していこうとしているのです。その結果は、先人の知恵をなぞったり少しだけ修正するものであったりします。今生まれつつある知見がこれまでと違うのは、他ならぬあなたにとってどうなのか、しかも未来のあなたではどうなのかを予見できるようになりつつあることです。
あなたの情報が、他の多くの人たちの情報と共に、あなたの健康をつくり未来の多くの人たちに役立つものになる、そんな未来をひらいていきます。

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