個別化医療、個別化予防の先導モデルの構築

4. 個別化医療、個別化予防の先導モデルの構築

4-1. 概要

SNVを中心としたゲノム配列変異をもとにした個別化予防、個別化医療は一部ですでに始まっていますが、当計画の進展により、複合的な因子による各疾患へのリスクについて人々を層別化することで、さらなる深化が可能になることが期待されています。すなわち、当計画による大規模な前向きコホート調査情報、ゲノムを含むオミックス解析情報など、複合バイオバンクの統合的な情報により遺伝要因と環境要因を統合的に扱う研究が進められてきています。こうした取組の中で、多因子疾患の発症に対するリスク予測スコアの開発が可能になってきています。ToMMoは、個別化医療、個別化予防の実現に欠かせないリスク予測の開発を先導する取組を進めています。
また、生活習慣病を中心とした多因子疾患の発症リスク予測が現実的になり、それを医療に適用しようとする際には多くの課題があります。環境要因、遺伝要因と疾患の研究をもとに、一人ひとりの参加者にゲノムや生活習慣に基づく情報をどのように伝えていくかは大きな課題です。当計画ではまず、疾患と遺伝情報との対応についてのエビデンスが明確で、且つ表現型(症状や検査値など)が本人にも明らかな疾患から、遺伝情報回付のパイロット研究を進めてきました。こうしたパイロット研究を順次進めて、最終的には多因子疾患の発症リスク予測を一人ひとりに伝えられる、そうした遺伝情報の活用に向けた先導モデルを作ることを目指しています。

4-2. 状況と成果

遺伝情報回付に関して、2016年秋より先駆的なパイロット研究として、コホート調査参加者の一部に家族性高コレステロール血症に関する遺伝情報をお伝えする事業を行い、その追跡調査を実施しています。コレステロール値が高い、脂質異常症の既往歴があるなどの表現型が明らかな対象者に呼びかけを行い、事業に関するレクチャーを改めて受けていただきました。その中で、パイロット研究のインフォームド・コンセントを行い、再採血による確認検査を実施したうえで、関係する遺伝子の一塩基バリアントの有無をお伝えしました。また疾患の原因となるバリアントを持っている方には、専門医への受診推奨を行いました。2019年秋からは、症状や検査値などの表現型が明らかではない遺伝情報をお伝えするパイロット研究として、医薬品に対する反応性(PGx:Pharmacogenetics(ゲノム薬理学))に関する遺伝情報の回付を開始しました。今後は更に、遺伝性腫瘍の遺伝情報回付を検討しており、研究における遺伝情報回付の実施例を医療の枠組みにつなげることにより、次世代型医療の基盤構築に貢献することを目指しています。
また、ToMMoからは複数の遺伝要因を考慮して、2016年に新たなスパースモデリング手法(STMGP; smooth-threshold multivariate genetic prediction)を提案・発表していますが、その大規模データ対応と高速化を行っています。既に、10万人スケールのインピュテーションデータでこのモデルを用いた計算の実行が可能という試験的な結果が得られています。現在更に機能を充実させると共に、多様な疾患に適用可能なように努力を重ねています。

2-3. 今後の展望

更に大規模かつ高精度に進めていくゲノム・オミックス解析にもとづき、またコホート調査の進捗により経時的な健康状態の変化のデータも取り入れながら、多因子疾患の発症リスク予測モデルの開発を加速し、社会への実装を目指します。
当計画で開発した疾患リスク予測モデルを人々に回付するフィージビリティ研究を実施し、多因子疾患に対するゲノム医療の社会実装を推進していきたいと考えています。特に、大規模な縦断的データが得られるゲノムコホート調査の特徴を利用して、遺伝要因と環境要因を統合したこれまでにないリスク予測モデルを構築していくことは大きな目標です。