妊娠前からの葉酸サプリメントの摂取の状況(三世代コホート調査から)

葉酸は胎児の神経管形成に重要な栄養素であり、妊娠前からの摂取が推奨されています。胎児の脳や脊髄のもとになる神経管は妊娠初期に形成され、この時にたくさんの葉酸を必要とすることから、葉酸が不足すると先天異常が起こる可能性が高くなると言われています。つまり、妊婦さんが適切に葉酸を摂取することで、生まれてくる赤ちゃんの先天異常を減らす可能性があると分かっています。

葉酸は妊娠前4週から妊娠12週までの期間に1日480μg以上の摂取を国で推奨しているのですが、この量を毎日食事のみで摂取することは困難です。ToMMoが行う三世代コホート調査から得た膨大なデータの解析を進める中で分かってきたことの1つに、妊婦さんの葉酸の摂取率の低さがあります。妊婦さんの食事からの推定葉酸摂取量は平均403.8μg/日で、推奨摂取量(480μg/日)よりも少なく、葉酸が十分な量が摂取できていない妊婦さんの割合は97.1%という現状も明らかになり、論文で報告されました。
また、葉酸の摂取には葉酸サプリメントを利用することが推奨されていますが、三世代コホート調査において妊娠前からサプリメントを利用している妊婦さんはわずか18%(妊娠後は40.4%)でした。ちなみに諸外国のデータを見てみると、米国では31.3%、オランダでは37.3%、ポーランドでは52.9%です。(出典:Carmichael SL, et al. Am J Obstet Gynecol. 2006;194:203-10., Timmermans S, et al. Prev Med. 2008;47:427-32., Kurzawińska G, et al. Ginekol Pol. 2018;89:211-6.)つまり、三世代コホート調査のデータは諸外国と比べると妊娠前からの葉酸サプリメントの摂取率が低いということを示しているのです。

妊婦さんが葉酸を摂取する大切さは、近年日本でもだんだんと知られるようになってきましたが、データから見てわかるようにまだ十分でないのが現状です。このように統計的データを出し、実際にどのくらい足りていないのか数値化して発表することで、葉酸摂取の重要性がより正しく理解され、妊婦さんの葉酸摂取の啓発につながっていくと考えます。

関連リンク

三世代コホート調査をもとにした妊娠前からの葉酸サプリメントの摂取割合および摂取要因についての論文が掲載されました

日本疫学会で三世代コホート調査の研究成果を発表しました

(2020年4月24日)