臍帯血DNAメチル化情報を公開

ヒトのDNAの情報は一生変わらない、そう思っていませんか?
確かに、受精時に決定するDNAの塩基配列は基本的には生涯変化しませんが、環境により変化するものもあります。例えば、母親が受けた環境の影響により胎児のDNA情報が変化することがあります。そのひとつが「エピゲノム」で、「エピゲノム」の代表的な作用が「DNAメチル化」です。
DNAメチル化は遺伝子スイッチのような働きがあり、細胞分裂をしても受け継がれるため、分化した細胞に変化がずっと引き継がれます。特に、お母さんの胎内で起きたDNAメチル化は生涯に渡って残ることが知られており、成長や健康状態の一部に大きな影響を与えているのではないかと考えられています。

今回ToMMoとIMMは、妊娠期間中の胎内環境が反映されている臍帯血のDNAメチル化状態を解析し、その情報を公開しました。この臍帯血は三世代コホート調査で得られたもので、主な妊娠期疾患や新生児疾患を除外した例を対象として、在胎週数2週間ごとに公開しています。この解析情報と、母体内の環境ストレスを受けた胎児のDNAメチル化状態を比較することで、胎内環境要因による疾患発症メカニズムの解明につながることが期待されます。

実はDNAメチル化情報は、検体の採取や移送、保管、DNAの抽出方法等々により影響(バイアス)を受けやすいため、すでに公開している大人の末梢血(血管中の通常の血液)のDNAメチル化情報はバイアスを考慮して補正をしています。
ところが臍帯血は末梢血と異なり、赤血球にも核、つまりDNAが含まれていることが影響して、これまでの補正技術が適用できませんでした。このため今回、移送等により生じるバイアスを最小限に抑えた有核赤血球に対して全ゲノムDNAメチル化解析を行い、臍帯血用の補正技術を開発しました。この有核赤血球の解析情報も公開しています。

詳細はプレスリリースをご覧ください。
臍帯血DNAメチル化情報の公開 ~胎児期の情報を集積した世界初の試み~【プレスリリース】

(2021年12月16日)


DNAメチル化
DNA分子がメチル基による修飾を受ける現象。とくにDNA塩基のひとつであるシトシンで生じる現象を指すことが多い。