HLAパネル:38KJPN-HLAを公開

ToMMoは、日本人多層オミックス参照パネルjMorpに「HLAパネル:38KJPN-HLA」を新たに追加しました。
この成果は日本人全ゲノムリファレンスパネル 38KJPNの公開とともに発表され、2022年6月にプレスリリースしています。
日本人5万人分の全ゲノム情報の解析を完了~3.8万人分の全ゲノムリファレンスパネルを公開~

ヒト白血球型抗原(HLA:Human Leukocyte Antigen)はヒトの免疫に関わる重要な分子で多くの「型」を持っています。自己のHLA型と異なる型を持つ細胞が体内に入ってくると、免疫の働きにより異物として攻撃されるため、臓器移植や造血幹細胞移植ではドナーとレシピエント間におけるHLA 型の適合度が重要視されます。
今回公開した38KJPN-HLAは、このHLA型の頻度データです。HLA型にも日本人で比較的よくみられる型、稀な型が存在するのです。

HLAをコードする遺伝子は第6番染色体の短腕上にあり多数のアレル*を持つことが知られています。多数のアレルに加え、配列構造が類似した偽遺伝子も存在することから、これまでToMMoが実施してきたような解析方法では、正確なHLA型推定は困難でした。

そこで、38KJPN構築時にシークエンス解析した塩基の並びを使って、HLA遺伝子に特化した解析方法を適用しました。これまでの解析方法では、短い単位で解析した塩基の並びがどの場所のものなのか当てはめるためのお手本(参照ゲノム配列)はひとつです。HLAは多様性に富んでいるので、お手本がひとつだけだと当てはめられない箇所がたくさん出てきます。そこで、それぞれのHLA型のお手本に順番に当てはめていき、その結果を組み合わせて解析することで、型を特定していきました。

ところでHLA型は、下図に示すように階層的に細かく分類されており、WHO命名委員会により各分類の命名が行われています。

第1区域:アレルグループを判別
第2区域:アミノ酸置換を判別
第3区域:コード領域における同義置換を判別
第4区域:コード領域における変異を判別
接尾語:N, L, S, C, A, Qにより遺伝子発現の違いを表現

今回はアミノ酸変異を判別する第2区域までの解析情報が対象で、頻度を公開しているHLA遺伝子は以下のとおりです。

クラスIa抗原
HLA-A HLA-B HLA-C
クラスIb抗原
HLA- E HLA-F HLA-G
クラスII抗原
HLA-DPA1 HLA-DPB1  
HLA-DQA1 HLA-DQB1  
HLA-DRB1 HLA-DRB3 HLA-DRB4

移植の適合度などに利用されているHLA型ですが、今回の解析結果により、このHLA型の人は「アレルギー疾患になりやすい」「(自己免疫が起因した)I型糖尿病になりやすい」などのHLA型と疾患との関連とその作用機序の解明へ向けた研究がこれまで以上に進むかもしれません。

*アレル:同じ座位上で対立して存在する塩基

(2022年8月23日)