河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第14回

医療情報ネットワークがつくる未来の地域医療/情報共有し救命率向上

2014年9月17日 掲載
中谷純

紙カルテ、それは、われわれ医師が長きにわたり使い続けてきた医療を記録する媒体です。あの日、その大事な記録が津波に流されました。
医療の記録がなくなったことで、病歴、受診歴、投薬歴、検査歴などの情報が失われ、多くの患者さんが亡くなりました。二度と医療情報を失うものかという固い決意に基づいて、安全な電子医療情報ネットワークを用いて医療情報をバックアップしつつ日々の医療・介護福祉も支える「MMWIN みんなのみやぎネット」が、全医療職種の参加するオール宮城体制の下、生まれました。
医療というものは、そもそも体にまつわる情報を集めて状況判断し、必要な対処をすることの繰り返しです。その情報が正確であればあるほど正しい判断と対処ができるようになり、医療の質が上がります。その情報が早く伝われば伝わるほど早い対処ができるようになり、手遅れが無くなり、医療の効率・救命率が上がります。
医療情報を電子化しネットワークで扱うことで、情報を素早く正確にやりとりすると同時に、安全な遠隔地に保存し、正確に再現することも可能となります。医療介護福祉従事者間で情報を共有してもらうことで、初めての施設でも、生涯一貫して自分に合った適切な医療介護を受けることができます。
また、テレビ電話を使って離れた場所でその病気を専門とする名医の診察を受けることができたり、共通ICカードを持っていることで自分に合った救急医療を受けられたり、複数の病院にかかっていても薬の飲み合わせを考慮した処方・調剤をしてもらえたり、介護と医療の間での必要な情報のやりとりを素早く正確に行ってもらうことができます。
安全な医療介護福祉情報ネットワークは、近未来の地域医療福祉の礎となります。

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