河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第1回

人の病の原因を探る/環境と遺伝 大規模調査

2014年3月5日 掲載
山本雅之

運動不足、多量の飲酒、喫煙など、病気の原因とされる生活習慣はたくさん知られています。こうした要因が健康に悪いことは、どのようにして分かってきたのでしょうか?
動物実験では、例えば20匹のマウスを10匹ずつ二つに分け、他の条件はそろえた上で、片側には運動をさせ、片側は運動不足にして、経過を観察することができます。しかし、人間は動物と違いますし、健康に悪そうなことをやってもらうわけにもいきません。薬の効き方を調べる際は、多くの人にお願いして、薬を投与する人としない人に分けて経過をみることをしますが、それは病気になった後の話です。
そこで、たくさんの人々を対象にした調査が必要になります。1000人、1万人、10万人といった単位の人々の、食生活、労働状況、生活習慣などの環境要因を調査し、併せて健康状態を調べます。その中で特定の病気にかかった人とかからなかった人とを比べて、病気にかかった人の方でより多い環境要因とは何か、ということを探し出していきます。よく知られている食塩摂取量と高血圧の関係も、こうして明らかになってきたことです。
こうした大規模調査の最近の世界的な潮流は、遺伝情報を加えた調査を行うことです。ほとんどの病気は、生活習慣などの環境要因だけで起こるわけでも、遺伝要因だけで起こるわけでもないことは、長生きするヘビースモーカーがいることを見ても明らかです。
環境要因と遺伝要因が連関して起きる病気の原因を探るためには、多くの人々の協力を得て、遺伝情報と環境要因の情報を広く集めて解析しないとなりません。私たち東北メディカル・メガバンク機構が取り組んでいるのは、こうして病気の原因を突き止めて治療と予防に結び付けることなのです。

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