東北メディカル・メガバンク機構

地域子ども長期健康調査からわかってきたこと

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    東北メディカル・メガバンク機構では、平成24年度から27年度にかけて宮城県内の小中学生を対象に「地域子ども長期健康調査」を実施しました。子どもたちの健康が、震災後にどう変化していったかご紹介します。

    震災の影響があった症状・所見と年ごとの傾向

    この調査により、湿疹症状とこころの所見について、震災の影響があることがわかりました。ただし、これらの所見については、年を追うごとにやや減少傾向がみられます。

    津波を経験した:「今回の震災にて、あなたのお子さんが経験したことをすべて選んでください。実際に見た・音を聞いたことも含みます。」という質問で「津波」にチェックが入っていた子どもを対象者としています。
    住居環境の変化:次に該当する子どもを対象としています。プレハブ型応急仮設住宅、借上げ制度による民間賃貸住宅、借上げ制度によらない賃貸住宅、家族・友人・親戚宅に転居 、震災により損壊した場所に家屋を再建、新たな場所に家屋を新築、その他引越し

    津波を経験した子どもと経験しない子どもで湿疹症状をもっている割合を比較したもの
    childresultgraph01
    津波を経験した子どもと経験しない子どもでこころの所見がある割合を比較したもの
    childresultgraph02
    住居環境が変化した子どもと変化しない子どもで湿疹症状をもっている割合を比較したもの
    childresultgraph03
    住居環境が変化した子どもと変化しない子どもでこころの所見がある割合を比較したもの
    childresultgraph04

    ※グラフ中の [ ]内は95%信頼区間

    湿疹症状とこころの所見について、震災の影響があるものの、減少傾向にあることがわかりました。この理由については次のようなことが考えられます。

    なぜ湿疹症状は減少傾向がみられるのか

    湿疹症状の症状コントロールは衣食住すべて(刺激のない衣服、入浴頻度やお湯の温度、食事内容の注意等)に配慮する必要がありますが、震災から時間が経つにつれ、それらの配慮が適切に行える状況になってきた可能性があります。また、湿疹症状の症状にはこころの状態が大きく影響します。こころの所見の軽減傾向に伴って体の症状も軽減傾向がみられるようになったことや、かかりつけの医療機関に適切に受診できるようになったことも理由として考えられると思います。

    なぜこころの所見は減少傾向がみられるのか

    子どもは周囲の環境の影響を強く受けます。震災から年数が経つにつれ、住居が定まったり、家計の経済的な安定を得るなど生活環境が落ち着くことは、子どもがストレスから回復することに良い影響を及ぼすと考えられています。通常、環境の変化や経験などからくるストレスは、時間の経過と共に軽減されると言われています。強いストレスが理由の場合、配慮を要する対応や専門家の対応が必要なこともありますが、一番は、子どもが安心して生活できる環境を整えることといわれています。また、東北メディカル・メガバンク機構で、希望の方に実施した1,600件以上の電話支援と、100件以上の面談も、保護者と子どもの支えになったと考えます。

    震災直後、建造物の倒壊、震災ごみ等による呼吸器系の疾患の増加が心配されましたが、喘鳴症状(呼吸時に、ぜいぜい、ひゅうひゅうという音がすること)については、明らかな震災の影響はみられませんでした。
    湿疹症状の頻度(4年間を通じて21.2%) 、および、こころの所見の頻度(4年間を通じて15.4%)については先行研究*と比較して高値であるため、引き続き注意深いフォローアップが必要です。
    *湿疹症状の全国平均は16.6%(小学1年生)、10.7% (中学2年生). 平成19~21年度厚生労働科学研究費補助金(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業)分担研究報告書.全国小児気管支喘息有症率調査に関する研究.主任研究者・赤澤晃.2010. 地域の小学生2,899人( 4~12歳)を対象とした先行研究ではこころの所見(SDQ 16点以上の割合)は9.5%。Matsuishi et al. Brain & development 2008;30:410-415.

     

    地域子ども長期健康調査が完了して

    東日本大震災後、子どもたちの心身への影響が懸念されました。この懸念をもとに「地域子ども長期健康調査」は始まりました。

    大きな災害の後、今回の調査のように広い地域、幅広い年代の子どもたちの調査を行った事例はこれまでありませんでした。この調査により、災害後に現れやすい子どもの症状や、どのような災害を受けた子どもがどんな症状が出やすいのか、情報として残すことができました。この情報は今後、大きな災害が起こった時に、どんな子どもにいつどのようなサポートが必要か、有用な指針になると思われます。

    そして、子どもの病気を発見したりサポートしたりするのは、医療機関だけでしょうか?症状が明らかになって病院に行く前に、家族や教育機関等、地域の大人たちが病気に気が付けば、早期発見・早期治療につながります。特にメンタル面の症状は、子どもと生活を共にする周りの大人たちにしか気づけないこともたくさんあります。そして、病気の検査、治療では、医療機関や市町村の保健行政機関が重要な役割を果たします。大災害の後はもちろん、子どもにとって大きな変化があったとき、発見から治療まで、子どもを取り巻くすべての環境で連携した見守りが重要なのです。

    地域子ども長期健康調査は完了しましたが、ToMMo の「個別化医療」「個別化予防」の実現への取り組みは続きます。病気に苦しむ子どもを減らすため、子どもの病気の原因解明、治療方法の発見、新薬の開発に結び付くよう、引き続き事業を推進してまいります。

     

    関連リンク

    震災後4年間の宮城の子ども1万7千人の調査を完了【プレスリリース】

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