河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第41回

医療現場と大学における特許権/社会で広く活用目指す

2015年11月4日 掲載
 橋詰拓明

ノーベル賞を受賞された京都大の山中伸弥教授の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使えば、皮膚の再生、臓器の再生などができるようになるというニュースを覚えていますか? このiPS細胞に関する主な特許権は京大が保有していますが、京大はそのような目的のために、企業などが特許権を使うことを積極的に許諾しています。
一方で、製薬会社・医療機器メーカーなどは、治療薬や医療機器に関する特許を積極的に取得し、その独占販売により利益を上げ、研究投資の回収・再投資を行っています。このように、医療の現場では多くの特許が使われて、私たちの健康に貢献しています。
ただ、特許権はとても強い権利です。例えば、ある企業が健康に有用な情報について特許権を取得し、その特許権を行使して、自社独占で高額な費用を請求してくるとしたら、私たちの健康にとって好ましいこととは言えません。
大学でも有用な技術については積極的に特許権を取得しています。ご承知の通り、大学は研究と教育の場ですから、特許権を取得したからといって、大学そのものが医療現場で実施する可能性は低いです。では、なぜ大学は特許権を取得しようとするのでしょうか?
大学は、特許権を取得した場合、広く社会で実施してもらえるような形で特許権を承諾することを目指しています。
大学では、皆さんにご協力をお願いしてさまざまな研究を行っており、健康に役に立つ結果が得られた場合、皆さんの健康に役立つような特許権の取得・使い方をしていきます。
 
橋詰拓明プロフィール
リレーエッセー医進伝心 一覧