S | ようこそゲノムの世界へ

Into the genome era
ゲノムの時代へ
膨大な情報を、
わたしたちは自在にあやつって、
新しい時代を拓くことができるのか、
やがてくる明日への羅針盤に

治療の難しさはここにもあった?!

がん細胞ごとの遺伝子の違いと、シングルセル解析

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グラフ_01腫瘍を構成するがん細胞は、均一な遺伝情報をもつ集団ではなく、遺伝子に様々な違い(変異)があることが知られています。遺伝子の違いによって細胞の性質に違いが生まれるため、ひとつの腫瘍の中には増殖速度や薬に対する抵抗性の異なるさまざまながん細胞があり、こうした多様性が治療を難しくしている要因のひとつと考えられてきました。最近の研究では、腫瘍から取り出したがん細胞を一個ずつ解析し、腫瘍を個性のある細胞の集団として理解する試みが注目されています。2014年8月に米MDアンダーソンがんセンターから報告された論文では、予後の異なる2種類の乳がん(エストロゲン受容体陽性乳がん、トリプルネガティブ乳がん)からがん細胞の核を分取してゲノム解析を行い、2つの細胞集団における変異の分布や変異率の違い、がん細胞のクローン進化モデルなどが示されました。人が一人ひとり違うように、がん細胞にも多様性があることに目を向けることで新しい治療法が生まれるかもしれません。

参考文献:Wang Y et al., Nature. 2014. Aug.

2016.01.05|S

半導体シーケンサー

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sakae次世代シーケンサーには原理・特徴の異なる様々な機種があります。その中でも半導体シーケンサーと呼ばれる機器では、専用の半導体チップ上に並んだ数μmのウェル(穴)の中でシーケンシング反応が行われます。ToMMoに導入されている半導体シーケンサーIon Proton、Ion PGMの原理は次のようなものです。まず、解析するDNAサンプルを数百塩基の長さの断片に切り、1分子の断片を1個のマイクロビーズに付けて増幅した後、ビーズを1つずつウェルにいれます。続いて、ウェルの中にポリメラーゼを加えてDNA合成を行うと、ビーズ上のDNA断片に相補的なヌクレオチドが取り込まれる過程で水素イオンが生成されます。この水素イオンによってウェルの中のpHが変化するため、DNA合成が行われたかどうかをイオンセンサーで検出することができます。半導体シーケンサーは1回の稼働で生成されるデータ量がやや少ない一方で、ラン時間が短くリードが長め(400bp)であり、これまでエクソーム解析、トランスクリプトーム解析やターゲットシーケンスなどに活用されてきました。今後、精度の向上やスループットの増加が実現することで、クリニカルシーケンスに役立つと期待されます。

2015.09.28|S