治療の難しさはここにもあった?! | ようこそゲノムの世界へ

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治療の難しさはここにもあった?!

がん細胞ごとの遺伝子の違いと、シングルセル解析

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グラフ_01腫瘍を構成するがん細胞は、均一な遺伝情報をもつ集団ではなく、遺伝子に様々な違い(変異)があることが知られています。遺伝子の違いによって細胞の性質に違いが生まれるため、ひとつの腫瘍の中には増殖速度や薬に対する抵抗性の異なるさまざまながん細胞があり、こうした多様性が治療を難しくしている要因のひとつと考えられてきました。最近の研究では、腫瘍から取り出したがん細胞を一個ずつ解析し、腫瘍を個性のある細胞の集団として理解する試みが注目されています。2014年8月に米MDアンダーソンがんセンターから報告された論文では、予後の異なる2種類の乳がん(エストロゲン受容体陽性乳がん、トリプルネガティブ乳がん)からがん細胞の核を分取してゲノム解析を行い、2つの細胞集団における変異の分布や変異率の違い、がん細胞のクローン進化モデルなどが示されました。人が一人ひとり違うように、がん細胞にも多様性があることに目を向けることで新しい治療法が生まれるかもしれません。

参考文献:Wang Y et al., Nature. 2014. Aug.

2016.01.05|S