布施昇男 | ようこそゲノムの世界へ

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遺伝子から分かる! 緑内障の原因 -個別化医療への道-

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緑内障は視神経が障害を受ける眼の疾患で、近年日本人の失明原因の第一位となっています。日本人における緑内障の有病率は5.0%にものぼり、一般的な病気であると言えます。その主な病気のタイプである開放隅角緑内障の遺伝要因の大部分は、今まで解明されていませんでした。
今世紀に入り、ヒトゲノムプロジェクトの成果としてヒトゲノム配列が明らかにされ、一塩基多型(SNP)などのデータベースは急速に充実してきています。そのSNPを用いたゲノムワイド相関解析(Genome-wide association study:GWAS)によって、疾患に関連する遺伝子多型を検出することが可能となってきました。我々は、まだまだ高価な全ゲノム解析ではなく、安価で日本人集団のもつSNPを全ゲノム領域にわたり高精度で取得できる、SNPアレイ「ジャポニカアレイ®」を用いて緑内障遺伝子解析を行いました。緑内障の遺伝要因を探るため、565人の患者さんの遺伝情報を解析し、欧米において緑内障との関連が報告されている3つの遺伝子領域が日本人緑内障患者にも関与していること、この3つの遺伝子領域は、眼圧、視神経の血流や形状など異なる臨床的特徴と関連することを明らかにしました。

また、東北メディカル・メガバンク機構で解析した正常対照の遺伝子頻度も用いてアジア最大のGWASを実施し、緑内障の発症に関わる新たな7カ所の感受性遺伝子領域を同定しました。今まで、緑内障は生活習慣病と関係すると言われていましたが、遺伝子解析の点からはなかなか裏付けはありませんでした。今回、開放隅角緑内障が、2型糖尿病や心血管病と遺伝的背景を共有していることを明らかにしており、今後の緑内障の予防への有用な情報になると思われます。
これからの緑内障診療は、このような遺伝子解析を駆使し、

(1) 緑内障の罹患予測、リスク(かかりやすさ)判定
(2) 進行の予測
(3) 薬剤の選択、薬物に対する反応(効きやすさ)の予測

の個別化予防、個別化医療に向かうと考えられます。

【関連リンク】

開放隅角緑内障に関わる新たな7遺伝子領域を同定-1万5,000人の緑内障患者のゲノム解析から病因の解明へ-

緑内障の個別化医療への第一歩 – 緑内障の遺伝要因と臨床的特徴の関連を同定 -【プレスリリース】

2018.09.07|布施昇男

加齢黄斑変性

~遺伝子多型解析から発症原因に迫る~

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Table1_1加齢黄斑変性は、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、視力が低下してくる病気で、遺伝要因と環境要因が影響し発症すると考えられています。我が国では、近年平均寿命の上昇と生活様式の欧米化により発症率が増加していると考えられ、後天的失明原因の第4位となりました(欧米では第1位)。加齢黄斑変性は、遺伝子多型と疾患との関連が特に強いものとして知られ、5つの遺伝子多型で約50%説明がつくとされています(Manolio TA, Nature 2009)。2005年からゲノムワイド相関解析(GWAS)によって、補体因子H(CFH)遺伝子、ARMS2遺伝子が加齢黄斑変性と関連していることが明らかとされ、加齢黄斑変性に慢性炎症が関与していることが示唆され、人種を超えて再現性が確認されています。日本からは、GWASにより新たなTNFRSF10A遺伝子領域の関連が報告されました(Arakawa S, Nature Genet 2011)。また、ARMS2遺伝子多型のリスクアレル頻度が加齢黄斑変性の3つのサブタイプにおいて違うこと、病変面積や両眼発症にも関連していることが明らかとなってきており、今後の個別化予防、個別化医療に向けたターゲットとして重要な疾患と考えられています。

2015.08.13|布施昇男