棒状で増やすか環状で増やすか―新たなシークエンサー開発―|ようこそゲノムの世界へ

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棒状で増やすか環状で増やすか―新たなシークエンサー開発―

塩基配列を調べる方法は、次世代シークエンス技術として飛躍的な進歩を遂げています。次世代シークエンス技術は、4つの塩基をどうやって見分けるか、どれだけの長さを連続して読めるか、調べたいDNAを増幅する必要があるかなどの点でさまざまな違いがあり、これらの違いがシークエンスの速さや正確さにも影響しています。
現在の主流は、目印を付けた棒状の一本鎖DNA断片をガラス板の上にくっつけて、2-4色の蛍光色素を使ってDNA配列を読んでいく方法です。棒状のDNA断片のくっついたガラス板に蛍光色素付きの塩基を流し込み、断片にくっついた色を端から順番に調べていくことで塩基配列を調べることが出来ます。ただし、断片1本1本の出す光は弱いため、カメラで蛍光を検出するためにガラス板上で1000本ほどのコピーを作らなければなりません。そこで、ガラス板についていない方の断端をガラス板にくっつけて橋を渡すようにしたあとにPCRによって断片を増やします。PCRは鋳型となる1本鎖DNAの端からペアとなる塩基をくっつけて行くことで、DNA断片を2倍に増やすことが出来ます。この反応(過程)を繰り返せばDNA断片を2倍2倍と対数増殖的に増やすことが出来るため、遺伝子解析ではPCRが広く活用されています。

そんな中、まったく異なる原理によってDNA断片を増やす技術が開発されました。これまで活用されているPCRでは棒状のDNAを鋳型としていましたが、新しい方法ではローリングサークル型のDNA増幅を行うため、環状にしたDNAを鋳型にしています。PCRは鋳型のコピーから次のコピーを作るため、途中で入ってしまったエラーも次のコピーをつくる際に含まれてしまいます。一方、環状にしたDNA断片を使う技術では、常に最初のもともとのDNA断片を鋳型としているためこのようなことが起こらないと言われています。このコピーは環状のDNA断片の周りをグルグルと回りながらペアとなる塩基を並べていくため、1本の長い糸のようになり、この糸を再度グルグル巻きにして毛糸玉のようにします。これをDNB(DNA Nanoball)と呼んでいます。DNBには300-500のコピーが含まれ、従来の方法と同様にガラス板にくっついて光を出します。この技術を用いたシークエンサーはすでに開発のうえ販売されており、今後は、こちらの手法も活用されていくものと思われます。

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遺伝子配列を読む方法は他にも多く開発されており、目的に合わせて選択されています。技術は日々躍進しています。数年後にはまた新たな手法が開発され、思いもよらなかった選択肢が広がっているかもしれません。

【関連リンク】

東北大学東北メディカル・メガバンク機構ウェブサイト 施設紹介>シークエンス解析

2020.07.16|川嶋順子