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ヒトゲノムには、容姿や体質など、ヒトとヒトとの違いに関わる様々な遺伝情報が刻み込まれています。約30億塩基対からなるヒトゲノムでは、タンパク質に翻訳される遺伝子のエキソン領域は2 %程度で、その他の領域は、イントロンなどの遺伝子間領域と反復配列で構成されています。反復配列の中でも、レトロトランスポゾンであるSINE(short interspersed element)の一種として知られるAlu配列は、霊長類に特異的な反復配列で、ヒトゲノムの約10%を占めます。その数は100万コピーとも言われていますが、Alu配列の機能や生物学的な意義は明らかになっていません。ゲノム解析技術の進歩に伴い、数千人規模の個人ゲノム解読や、反復配列領域の個人間比較ができるようになってきました。これらの解析から、Alu配列の位置や分布に個人差があることや、Alu配列がプロモーター領域やエキソンまたはイントロンに挿入されることで、近傍に位置する遺伝子の機能を変化させ、病気を引き起こすことなどが明らかになってきました。かつてジャンクDNAと呼ばれ、これまで重視されなかったAluを含む反復配列が、ヒトの表現型に及ぼす影響や、ヒトゲノムにおける反復配列の生物学的意義の解明が進められています。
参考文献:Xing et al., Genome Res. 2013, 26:1516-1526