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“スティグマ”を避けるには~感染症の流行で、そしてゲノム研究でも

「スティグマを避けよう」という言葉、聞いたことがありますか?
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、スティグマを避けよう、という声が上がっています。“スティグマ”、日常ではあまり聞きなれない言葉ですが、英単語の直訳では、汚名・烙印といった意味になります。もともとは奴隷や家畜に押された焼印に由来し、キリストが十字架で受けた傷あとなども指す言葉とされます。

さて、現在、問題にされているのは社会的スティグマです。社会において、何らかの属性を持つことから差別や偏見の対象として扱われてしまうようになることを指します。属性は、民族や外見、障害などであることもあり、あるいは、何らかの疾患の罹患ということもあります。
本稿執筆現在(2020年4月23日)、新型コロナウイルスの感染拡大の局面で、問題になっているのは、ウイルス感染や、それに少しでも関係することが、そのスティグマの対象となっている事態が懸念されていることです。実際、感染者を出した機関の職員等が、各種サービスの利用を拒絶されたりする、といった事態が発生しているという報道があります。保育園利用や入店を断るといった対応は、相手を根拠なしに接触するべきでないとするというスティグマ=烙印を押していることになります。こうした差別的な扱いがあってはなりません。
また、スティグマを避けることは、差別があってはならないということに加えて、寧ろ感染拡大を防ぐためにも重要になります。不必要に感染者を叩くようなことは、人々が感染について明らかにしづらくなったり、感染経路について秘匿するようになったりといったことに繋がります。

実はゲノム研究においても、スティグマを避けることは大きなテーマであり続けています。特定の家系から特定の疾患が多くあらわれる、特定の地域で遺伝性の疾患が多い傾向がある、といったことは、科学的事実であっても、そうしたスティグマに結びつきやすいものです。研究に際して、また、発表に際して、さまざまな配慮を行って、科学的な解明と、社会的な行動等との負の結びつきを断っていこうという努力がなされています。
今回の事態においても、それぞれの立場で、スティグマを避けていく努力が必要です。私たちは常に、感染拡大を防ぐ、という名目のもとに、何かの属性をもった人たちを苦しめることになっていないか、留意していく必要があります。

2020.04.24|長神風二