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~酸化ストレスに素早く応答する生体防御の仕組み~

ストレスがない時(図を拡大)       酸化ストレス時(図を拡大)
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環境中には、様々な毒性物質があり、呼吸や食事で体内に取り込まれます。中には、放っておくとDNAやタンパク質などを酸化させ、様々な疾患の原因となるものがあります。これらの物質を解毒化するため、ストレス防御遺伝子が働くことが知られていますが、体内で毒性物質が悪さをする前に、素早く応答する必要があります。
細胞には、実はこのような毒性物質に対するセンサーが備わっており、Keap1タンパク質を含むタンパク質複合体でできています。Keap1が働く仕組みは次の通りです。細胞はストレスがない時から、ストレス防御遺伝子のスイッチをONにするNrf2という転写因子を合成していますが、そのほとんどはKeap1複合体によって分解されています。しかし、Keap1が毒性物質などのストレスを感知すると、Nrf2の分解は停止して、量が増加することで防御遺伝子のスイッチがONになります。普段から、使わないNrf2を合成し、Keap1複合体がすぐに分解してしまう、一見無駄とも思える方法ですが、ストレスに応答して素早く防御機構を発動させる仕組みとして、とても有効であると考えられています。

参考文献:Takafumi Suzuki, Masayuki Yamamoto, Free Radic Biol Med. 2015 Jun 25. doi:10.1016/j.freeradbiomed.2015.06.006

【関連リンク】
酸化ストレス防御にはたらく転写因子Nrf2の量的調節機構の解明

2015.09.10|クリビットJr.