加齢黄斑変性|ようこそゲノムの世界へ

Into the genome era
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加齢黄斑変性

~遺伝子多型解析から発症原因に迫る~

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Table1_1加齢黄斑変性は、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、視力が低下してくる病気で、遺伝要因と環境要因が影響し発症すると考えられています。我が国では、近年平均寿命の上昇と生活様式の欧米化により発症率が増加していると考えられ、後天的失明原因の第4位となりました(欧米では第1位)。加齢黄斑変性は、遺伝子多型と疾患との関連が特に強いものとして知られ、5つの遺伝子多型で約50%説明がつくとされています(Manolio TA, Nature 2009)。2005年からゲノムワイド相関解析(GWAS)によって、補体因子H(CFH)遺伝子、ARMS2遺伝子が加齢黄斑変性と関連していることが明らかとされ、加齢黄斑変性に慢性炎症が関与していることが示唆され、人種を超えて再現性が確認されています。日本からは、GWASにより新たなTNFRSF10A遺伝子領域の関連が報告されました(Arakawa S, Nature Genet 2011)。また、ARMS2遺伝子多型のリスクアレル頻度が加齢黄斑変性の3つのサブタイプにおいて違うこと、病変面積や両眼発症にも関連していることが明らかとなってきており、今後の個別化予防、個別化医療に向けたターゲットとして重要な疾患と考えられています。

2015.08.13|布施昇男