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三世代コホート調査
2024.06.25
つわりの原因解明にむけて
いつやってくるかわからない吐き気、水やお茶ですら不味く感じる味覚の変化、何か月も続く風邪のようなだるさ・・・
妊婦さんのおよそ80%が経験するといわれるつわりは、いずれ治まることがわかっている症状だとはいえ、経験している最中の女性にとっては重大な問題です。症状の個人差は大きく、深刻なものは妊娠悪阻(おそ)とよばれ、脱水症状や急激な体重減少から命の危険さえ生じることになります。
しかしながら、その原因や発生するしくみには明らかでない部分が多く残されています。生理痛などと同様に一過性の症状であることや、「病気」ではないことから、真剣に取り組まれていなかったのかもしれません。
さらに、この分野に関するこれまでの研究の多くは、ヨーロッパに祖先をもつ集団を対象としてきたというデータの偏りもありました。一方でアジア人を対象とした研究は少なく、日本人などこれまでの研究に含まれない人々に既存の結果が当てはまるかどうかは明らかにされていませんでした。
ToMMoでは、三世代コホート調査に参加した妊婦さん23,040人を対象に、つわりや妊娠悪阻のいくつかのタイプ(つわりの有無、吐き気・嘔吐の有無、食事摂取の可否)と、遺伝的要因の関連を調査しました。この研究は、日本人を含め、東アジアに祖先を持つ集団を対象としたはじめての研究だと考えられます。
今回、遺伝子上の2か所の特定の場所(遺伝子座)に存在する特徴が、つわりと関連することが明らかになりました。ヨーロッパに祖先を持つ集団を対象とした先行研究においても、この2つの遺伝子座とつわりとの関連が報告されており、これまでの研究結果をさらに多くの人びとに一般化できる可能性が示されました。
今後は、この研究で特定された遺伝子座に関連するタンパク質に作用する治療法の開発といった、新たな展開が期待されます。耐えるしかなかったつわりに、効果的な対処法が見つかるといいですね!
・関連リンク
三世代コホート調査をもとにした「日本人を対象としたつわりの遺伝的背景」に関する論文が掲載(2024年4月3日)