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三世代コホート調査

2023.09.08

デジタルデバイスの見すぎは子どもの発達に影響するのかしないのか

私達の生活に急激に広がったデジタルデバイス。テレビやスマホから完全に離れている時間はほとんどない、という人も多いのではないでしょうか?
大人や青少年はもちろん、赤ちゃんもデジタルデバイスに接しています。ToMMoでは、三世代コホート調査に参加した赤ちゃん7,097人のデータを用いて、1歳児のデジタルデバイスの視聴時間とその後の発達特性に関連があるのか、あるとすればどのような発達特性と関連があるのか? そしてその関連は続くのか? を調べました。

その結果、デジタルデバイスを長時間見ていた1歳児は、2歳と4歳の時に下記の5つの発達領域のうち、「コミュニケーション」と「問題解決」の2つの領域で、発達を評価する点数が相対的に低く、その関連が2歳から4歳にかけて続いていることがわかりました。

  • コミュニケーション(喃語、発声、理解)
  • 粗大運動(腕、体、脚の動き)
  • 微細運動(手や指の動き)
  • 問題解決(学習、おもちゃでの遊び)
  • 個人・社会(おもちゃや他の子どもとの遊び)

研究の方法やデータは 1歳時のスクリーンタイムが2歳・4歳時点の発達特性の一部と関連【プレスリリース】をご覧ください。

ここまで読んだ方は「赤ちゃんにテレビやスマホを長時間見せると発達が遅れるのだな。見せない方がいいな」と思ったかもしれません。でもよく考えてみてください。
例えば、赤ちゃんをランダムに「長時間視聴させるグループ」「短時間視聴させるグループ」「全く視聴させないグループ」に分けて育てた結果こうなったのだとしたら、長時間の視聴が発達に影響する、と言えるかもしれません。でも、赤ちゃんにそんな事をさせるわけにはいきませんよね。

実はテレビやスマホをずっと見る傾向がある赤ちゃんと、そうではない赤ちゃんとの違いが、発達の評価点数として表れているのかもしれません。つまり、長い視聴時間は、発達の違いの原因ではなくて結果だという考えです。一方で長い視聴時間が原因であるという可能性も否定できません。今回の研究の範囲ではどちらなのかまでは、わからないのです。

今回の研究でわかったのは、デジタルデバイスの視聴時間が、発達全般ではなく一部の領域と関連していた、という事です。ToMMoは健康調査から得られた研究結果を、わかったことと、わからないことをきちんと区別して、正しく伝えていきたいと思っています。社会が大きく変わり、昔ながらの子育てが難しくなっている中、デジタルデバイスの影響を気にしている親御さんも多いでしょう。研究成果の報道には時々刺激的な表現のものもありますが、裏付けや根拠があるか? 大げさに言っていないか? 冷静に見極めていただくための材料になるような情報発信を心がけます。

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