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三世代コホート調査

2022.05.17

母親のパーソナリティの評価は妊娠中の飲酒や産後のメンタルヘルスの早期対応に役立つ

妊娠中の飲酒は、胎児に影響を与えることが知られています。また、産後の母親のメンタルヘルスは、本人のみならず子どもや家族にも影響を与える公衆衛生上の懸念事項とされています。それらの点に着目し、三世代コホート調査をもとにした母親のパーソナリティと妊娠中の飲酒および産後のメンタルヘルスに関する論文を2報発表しました。

三世代コホート調査をもとにしたパーソナリティと妊娠中の飲酒に関する論文がAddictive Behaviors誌に掲載されました(ToMMoウェブサイト)

母親のパーソナリティと産後のメンタルヘルスに関する論文がScientific Reports誌に掲載(ToMMoウェブサイト)

母親のパーソナリティはいずれの研究もEysenck Personality Questionnaire-Revised(EPQ-R)短縮版を用いて、妊娠中の神経症傾向(情緒不安定性・不安)、外向性傾向(社会性・活発さ)、非協調性傾向(意志の強さ・攻撃性)を測定しました。
母親のパーソナリティと妊娠初期・中期の飲酒との関連を検討した研究では、外向性傾向の高い女性は妊娠初期・中期の両時点で飲酒をしている割合が高いこと、非協調性傾向の高い女性は妊娠初期から中期にかけて禁酒をする割合が低く、妊娠中期で飲酒をしている割合が高いことがわかりました。
産後のメンタルヘルスの研究では、エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)の総得点およびその下位尺度である抑うつ、不安、快感喪失(心身の快い感覚を自覚できない状態)を測定しました。その結果、産後1か月時点でうつ兆候(EPDS総得点9点以上)を有する割合は13.1%でした。神経症傾向の高い女性はうつ兆候の割合が高く、抑うつ・不安・快感喪失の傾向も高い一方で、外向性傾向の高い女性はこれらが低かったです。非協調性傾向の高い女性はうつ兆候の割合が低く、不安の傾向も低い一方で、抑うつ、快感喪失との関連はみられませんでした。

妊娠期の早い段階から妊婦と接する機会が多い医療関係者によるパーソナリティは比較的容易に測定できるため、妊娠中の飲酒のスクリーニングや産後のメンタルヘルスに関するリスクの高い女性のスクリーニングに適していることが、これらの研究から示唆されました。

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