ピックアップ

震災関連文献レビュー

2022.01.20

東日本大震災にともなう健康影響についての文献レビューの論文を発表しました

2011年3月11日に発生した東日本大震災から11年を迎えようとしていますが、2021年6月の段階で東北6県の避難者数は13,000人を超えており、震災時のみならず中・長期的な避難生活による健康影響が懸念されています。
そこで、当機構の予防医学・疫学部門の寳澤篤教授らのグループは、東日本大震災による健康被害の結果を疾患発症の予防に活かすために文献レビューを行いました。特に甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県の大規模疫学調査の48編の文献をレビュー対象としました。

東日本大震災に伴う災害による健康影響に関する文献レビューが日本循環器病予防学会誌に掲載されました(ToMMoウェブサイト)

主な結果として、大うつ病などの増加、運動習慣の減少、循環代謝系の疾患(脳血管疾患、糖尿病、高血圧、メタボリック症候群等)の増加、さらに社会的孤立といった社会的影響が示されました。特に避難者において肥満や高血圧、糖尿病の発症リスクが高いことが報告されていました。また、福島の放射線被害で懸念されていた甲状腺がんの発症については現時点で有意な関連は認めませんでした。

今回のレビューは震災後の短・中期的な健康影響を報告しましたが、今後、動脈硬化性疾患、心疾患、脳血管疾患の発症を増加させるかどうかの調査が必要です。今後の大規模災害に備えるためにも、当機構のコホート調査のような健康調査を長期的に続ける必要があると改めて認識しています。


復興庁 全国の避難者数(令和3年6月9日現在)

ページの上部へ移動する