ピックアップ

三世代コホート調査 

2020.04.13

震災が残した影響を正しく知り支援につなげる ~震災と低出生体重児との関係~

三世代コホート調査では2013~2017年に妊婦さんにお声がけし、妊婦さんとそのご家族にご参加いただきました。その中には東日本大震災が発生した2011年3月11日に妊娠初期だったお母さんから生まれた子どもも含まれていました。そこで、この子どもたちと、震災発生前後1年に妊娠初期だった妊婦さんから生まれた子どもたちを比較すれば震災の影響を検証できるのでは、と考え解析を行いました。

比較したのは下記の時期に妊娠初期(14週まで)だったお母さんとその子どもの体重です。カッコ内は対象とした人数、低出生体重児(2500g未満で生まれた赤ちゃん)の人数(内数)とその割合です。

 (1) 震災1年前:2010年3月11日(259人、内13人、5.0%)
 (2) 震災当日 :2011年3月11日(349人、内21人、6.0%)
 (3) 震災1年後:2012年3月11日(487人、内45人、9.2%)

低出生体重児の割合を比較したところ、震災の影響がない(1)で低出生体重児が生まれた割合を基準としたときに、(2)は1.3倍と高い傾向にありました。さらに(3)は2.0倍と統計的に有意な差がみられました。なおこの解析では、低出生体重児が生まれる要因となるような産科系の疾患の有無が影響しないようにデータを補正しています。 

震災当日に妊娠初期だった(2)の方々よりも震災1年後に妊娠されていた(3)の方々から、より多く低出生体重児が産まれたことは私たちにとっても意外な結果でした。 これが震災の影響である可能性は高いと考えられます。震災後からある程度の期間は妊婦さんに対して専門家などによる手厚い支援が必要だったかも知れません。

今後解析が進むと今回の低出生体重児のことだけではなく、他にも震災の影響が疑われるケースが発見される可能性があります。調査・解析を継続し震災の影響を正しく評価する。そしてこの結果を支援につなげていく。このサイクルをうまく回していく必要があると考えています。

・参考
日本疫学会で三世代コホート調査の研究成果を発表しました(ToMMoウェブサイト)

ページの上部へ移動する