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被災地でのアンケート調査詳細

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  • Q1 : 今回のアンケート調査の概略を教えて下さい。

    菅原 : まず、調査の対象は、東日本大震災の当日3月11日を挟んだ2011年2月1日-10月31日に出産した、宮城県の津波被災地に住所を置く方です。3500人以上いらっしゃいますが、同意を頂いた886人へアンケートを送付し、683人から回答を得ました。アンケート項目は、分娩の状況から被災の状況、ライフラインの状態から自宅から避難していたか否かなど多岐にわたるものです。

    今回の研究では、アンケートから、エジンバラ産後うつ病自己調査票(EPDS)*1 のスコアを算出した上で、被災状況との間の関係も分析しました。その結果、今回の調査対象者では、産後うつ病のハイリスク群が21.5%にのぼりました。通常、ハイリスク群は産後2-3か月でピークをとり、概ね10-15%とされるので高い値です。

    Q2 : 被災状況との関連はいかがですか?

    菅原 : 回答者のうち、自宅からの避難者は460人にのぼりました。その方々の間でのハイリスクの方の割合は、23.9%で全体での平均よりも高い割合です。また、津波被災を受けた、という方は、188名から回答を受けたのですが、この中でのハイリスクの方の割合は28.7%と高い値になりました。また、現在、仕事がない方という中でのハイリスク割合も25.6%と高くなっています。

    Q3 : 今回の調査からわかってきた重要なことは何だとお考えでしょうか?

    菅原 : 震災後、平均して5.4カ月の時点での調査だった、という事情もあるのですが、浮かび上がってきたのは、分娩施設を変えた、低体重での出生だった、などといったいわゆる産科的な因子よりも、社会的な要因の方が、出産後の方々のメンタルの状況に寄与する割合が大きいということです。また、震災後特有のストレスが、EPDSスコアを高いままに留める要因になっている可能性があると考えています。

    つまり薬を投与すれば解決する、といった問題ではなく、その人がおかれた背景を含めて推定原因別に分類して、改善方法を考えていかなければならない、ということです。

    Q4 : 具体的にはどのようなことになるのでしょうか?

    菅原 : まず、倫理委員会の承認はすでに得ていますので、アンケートに答えた個々人の情報の連結作業を行っています。どの地域にどういう状況の方々がいらっしゃるかをきめ細かく見て行くことで、地域の病院や地元のキーパーソン(保健師さんなどの医療人)に情報を還元して、対策をとっていけると考えます。今後は、あらたなネットワークを形成し地域の病院の方々を通して、リスクの高い方々へのケアを行っていけると思っています。

    こうした活動は東北メディカル・メガバンク機構が設置を準備している、地域支援センターを拠点にして実施していくことも視野に入れています。

    Q5 : 有効な手を打てそうですね。

    菅原 : そう思います。地域の保健師さんや助産師さんといった一番患者さんに近いところから、個々のニーズ、価値観に合わせた草の根ネットワークを作っていくことが大事ですので、それを行いたいと思います。産後うつといっても様々であり、震災後に特有の背景があると思います。それぞれを群分けし、さらに関連部署や役所、NPOなどの窓口まで導く、そういう仕事を地元の方々と行いたいと希望しています。

    Q6 : 地域医療支援、ということとつながってきますね。

    菅原 : 地域医療には昔から興味がありました。医療過疎には産科は敏感です。数年前の産科医の減少による地域の周産期医療の崩壊、私はそのただ中にいました。

    産科は地域と未来を支えています。そこに医療セーフティーネットがなければ、地域の危機に繋がります。

    産科の試みとしては、仙台市で始めた産科セミオープンシステム*2 を被災地の石巻で行っています。このIT化を行うことが重要と考えています。

    また産科プロバイダーを養成する周産期救急プログラムであるALSOとBLSOなど*3 を導入する、といったことも被災地での人材育成につながると考えて検討しています。

    Q7 : 東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門の教授に就任して、抱負を訊かせて下さい。

    菅原 : 地域医療への支援を被災地の価値観、ニーズに合致した新たな視点で行いたいです。さらにゲノムコホートから得られる最先端医療を産科の周産期診療に持ち込みたいと思っています。

    十年後には必ずこの事業は成功すると思っています、絶対に。

    自分の役割は、地域のネットワーク作り、人と人とをつないでいくことだと考えています。

    菅原準一教授

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    地域医療支援部門教授。
    東京都出身。昭和五十八年に大学入学のため仙台に来て以来、基礎研究に没頭した一時期もあったが、ほとんどの期間、地域医療に関係して過ごしてきた。アメリカへ留学後は横手、八戸などにも赴任。東北大学病院産科長も務める。

    東北大学病院産婦人科

    *本研究は、厚生労働省の研究班で、東北大学大学院医学系研究科保健学専攻の佐藤喜根子教授らとの共同研究で得られました。

    用語説明
    *1 エジンバラ産後うつ病自己調査票(EPDS)
    30点満点の調査票で、9点以上の場合が産後うつ病のハイリスク群とされる。

    *2 産科セミオープンシステム
    「妊婦健診は通院が便利な診療所で、お産は設備が整った分娩施設で」をコンセプトに作られたシステム。東北大学病院産科の岡村州博教授が仙台市において導入した。

    *3 ALSO と BLSO
    それぞれ、Advanced Life Support in Obstetricsと、Basic Life Support in Obstetricsの略。医師やその他の医療プロバイダーが、周産期救急に効果的に対処できる知識や能力を発展・維持するための教育コースで、プライマリ・ケア医だけでなく産婦人科の研修医を対象とした訓練でもある。1991年にACLS(心肺蘇生法による二次救命処置)とATLS(外傷二次救命処置)に基づいて、ウィスコンシン州の一般診療医師二人がALSOを考案した。

    構成・インタビュアー : 長神風二
    原稿 : 影山麻衣子

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