施設紹介

東北メディカル・メガバンク棟は、平成25年度末に東北大学星陵キャンパス内に竣工しました。建築面積3,425.62㎡、延床面積18,017.67㎡の7階建て(一部5階建て)で、PC構造、基礎免震構造を採用し、隣接する5階建ての医学部6号館とは各階で、既存の医学部5号館とは2階部分で一部連結しています。 
バイオバンク施設(生体試料保管庫)、MRI装置、NMR装置、シークエンス解析設備、スーパーコンピュータ等を導入し、1階にはカフェのあるアトリウム、2階には地域支援仙台センター、仙台子どもけんこうスクエアを設置し当機構が推進する地域住民コホート調査・三世代コホート調査のための健康調査を実施しています。3階以上は、オミックス解析設備、アレイ解析設備などラボスペースとなっています。

当機構では各施設を含む視察・見学を受け入れています。ご希望の方は見学のページをご確認ください。また、バーチャルツアー動画もご覧いただけます。

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各施設のご案内

 

地域支援仙台センター

地域支援仙台センターは、東北メディカル・メガバンク機構が行うコホート調査の拠点の一つとして設置されました。参加を希望される方お一人おひとりからGMRC(ゲノム・メディカルリサーチコーディネーター)が説明し同意をいただくためのブースや、身長、体重、体組成、骨密度測定、血液検査、呼吸機能検査、眼科検査、口腔内検査、タブレットPCを使ったアンケート調査などに対応できる設備を備えます。また、MRI検査と付随する認知機能検査のための部屋や、メンタルヘルス対応や遺伝カウンセリングなどに使われる個別の面談室もあります。

地域支援センター
健康調査設備

健康調査設備についてはこちらを参照ください。

MRIについて

3.0テスラの高解像度のMRI装置が2台設置され、年間千名以上を対象にMRI検査を行うことができます。脳MRI検査では、MPRAGE法、脳拡散強調画像法などの様々な撮像方法を取り入れ、脳灰白質/白質体積、脳白質線維束、脳白質病変、脳血管の走行の評価などが可能です。これらのデータから、震災後に悪化等が懸念されるPTSDやうつ病等の精神疾患、長期的な認知機能低下への影響や認知症などを研究することができます。

関連リンク

ToMMo事業紹介VTR 地域支援センター型 

ToMMo事業紹介VTR 脳と心の健康調査

 

仙台子どもけんこうスクエア

仙台子どもけんこうスクエアは、お子様の健やかな成長を見守っていくために、お子様を対象とした健康調査を実施する施設として2017年6月に新しく開設されました。三世代コホート調査に既に参加されている主に5歳、10歳、16歳のお子様に、楽しく健康調査を受けていただけるような施設となっています。主要な調査設備は地域支援仙台センターと同様ですが、特にお子様の発達と関わるGazefinder(社会性発達評価検査)などの特別な装置も設置しています。

  

 

スーパーコンピュータシステム

スーパーコンピュータシステムは、15万人規模のゲノムコホートから生まれるさまざまなデータを保存するデータ基盤であり、また、大規模なゲノム・オミックス解析を支える解析基盤です。
データ基盤としては、高速なデータ解析を可能にする超並列ハードディスク装置、またデータを目的にあった形式で保存することができる最新のバックアップ装置を装備しています。
解析基盤としては、次世代医療の構築に必須の大規模ゲノム・オミックス解析を実行する多数のCPUを備え、高速なデータ解析を可能にしています。
本システムは高度なセキュリティを確保しながら、複合バイオバンクによる多様なデータを、個別化ヘルスケアを実現するために必要な解析を効率的に行えるように設計された、ライフサイエンス分野では日本最大規模のシステムです。
2014年に最初のシステムを導入し、2018年と2022年にアップデートされ、現在まで運用されています。

 

設備と構成
  計算ノード 共有メモリ型
計算機
GPU解析ノード ログインノード DBサーバ 
総ノード数 130 3 3 8 6
総コア数 14,880 384 384 1,024 768
総メモリ量(TB) 60 12 1.5 8 3
総GPU数 24

これらとは別に運用管理サーバ、WEBサーバを備えています。

高速ストレージ アーカイブ用
オブジェクトストレージ
55PB 10.5PB

これらとは別にテープライブラリ・光ディスクライブラリを備えています。

その他システム特長
● 高速イーサネットスイッチ : 200/100 Gigabit Ethernet
● バックアップ装置 :テープライブラリ・オブジェクトストレージ・光ディスクライブラリを目的に応じて使用

詳細はスーパーコンピュータポータルサイト内のシステムについてをご覧ください。

共用端末室

生体認証による入室施設などセキュリティを担保した部屋に、スーパーコンピュータシステムへの接続利用が可能な端末を複数台備えています。日本全国に数十か所設けられた遠隔セキュリティエリアや、東北メディカル・メガバンク機構日本橋分室共用端末室と同様に、統合データベースdbTMMの利用やスーパーコンピュータを利用した解析や計算が可能です。主に星陵キャンパスの研究者によって利活用されているほか、遠隔セキュリティエリアの設置が行われていない機関の研究者により利用されています。また、複数の端末が設置されていることから、高度なセキュリティを要するデータを実際に利用した、解析講習などにも活用されています。

関連リンク

ToMMoスーパーコンピュータポータルサイト

ToMMo事業紹介VTR スーパーコンピュータ

 

バイオバンク(生体試料保管庫)

数百万本の試料を保管できる日本最大級のバイオバンク施設です。大型液体窒素凍結保存容器は細胞保存に使用しており、自動回転機構が一部装備されています。細胞は液体窒素の液相とは接触させず、上部の-180℃以下の気相部分に保存します。全自動試料保冷庫はDNAを4℃にて、血液成分や尿を-80℃にて保存し、ラボラトリ情報管理システム(LIMS)と連動して自動で入出庫作業を行います。入出庫時の試料の温度上昇は、最小の開口面積と高速な作業により最低限に抑えられます。多くの試料調整工程を自動化することによって人為的エラーを抑制し、LIMSによる試料の確実な管理と安定した温度での長期保存を行っています。

 

設備と構成
全自動試料保存システム
装置名 運用温度 容量 特長
-80℃保管用:
Brooks BioStore II
-80℃
(3台:血漿,尿など保存)
総計590万本程度のサンプルチューブ保管可 完全自動化された入出庫システム。開口部が小さく、温度変化が小さい。
4℃保管用:
Brooks SampleStore II
4℃
(1台:DNA保存)
大型凍結保存容器
装置名 数量 容量 特長
大陽日酸
DR-1000AT(G)-16
16 総計130万本程度のサンプルチューブ保管可 液体窒素の自動充填装置を備え、-180度以下の安定した気相状態の中で試料を保管。
CHART社
MVE 1894R-190AF-GB
6
関連リンク

ToMMo事業紹介VTR 生体試料のバンキング

 

シークエンス解析

全ゲノムシークエンスや遺伝子発現解析等の、様々な解析に対応可能な次世代シークエンス解析設備です。短鎖読取り型シークエンサーのほかに複雑なゲノム構造多型を解析するため、長鎖読取り型も活用しています。検体の取り違いを防止するため、工程は可能な限りロボット(自動分注ワークステーション)による自動化を採用しています。30億文字からなるヒトのゲノム配列を高精度に決定するには、その20-100倍(~3000億文字)程度のデータを取得し解析する必要があります。シークエンス解析で得られた膨大なデータは、安全な専用ネットワークでスーパーコンピュータシステムに送信・保管され、更なる解析が行われています。   

設備と構成
装置名 概要
NovaSeq 6000 (Illumina) ・最大出力:3,000 Gb/フローセル
・最大リード数:100億リード/ラン
・最大リード長:150 bp×2(S4フローセルの場合)
一度に60人分の全ゲノムデータを解析可能
HiSeq 2500 (Illumina) ・最大出力:90 Gb/フローセル(Rapid Run Mode)
・最大リード数:3億リード/ラン(Rapid Run Mode)
・最大リード長:150 bp×2(Rapid Run Mode)
当機構の発足時に導入したシークエンサーで、現在は小規模な解析に使用。
MiSeq (Illumina) ・最大出力:15 Gb/フローセル
・最大リード数:25百万リード/ラン
・最大リード長:300 bp×2
メタゲノム解析(菌叢解析)やシークエンスライブラリの品質確認に使用。
PromethION 24 (Oxford Nanopore Technology) ・出力:~75Gb/フローセル*(プロトコルによって異なる)
・リード長:~2.5万 bp*(検体の品質に依存)
長鎖リードシークエンサーに分類され、複雑なゲノム構造多型解析に利用。
* JSV1:Japanese Structural Variation構築の際の条件にて

 

オミックス解析

血液や尿の中に含まれる、様々な代謝物やタンパク質を高精度に分析、定量できる最先端のオミックス解析設備です。高磁場高感度核磁気共鳴(NMR)装置(800MHzと600MHz)と各種質量分析装置(LC-MS, GC-MSなど)が設置されており、解析対象や目的に応じて様々な分析が可能です。また各装置には多検体を自動で測定できる設備が付属しており、年間数千検体の試料の解析が可能です。得られたデータはスーパーコンピュータシステムに保管され、日本人の標準的なオミックス情報(代謝物やタンパク質の種類や量)として、様々な医療や研究に役立てられます。

   

設備と構成
核磁気共鳴(NMR) 装置
用途 装置名 共鳴
周波数
装備
網羅的定量メタボローム解析 Bruker 800 NMR 800MHz 高感度極低温プローブ
自動サンプル交換装置
網羅的定量メタボローム解析 Bruker 600 NMR 600MHz 高感度極低温プローブ
自動サンプル交換装置

 

質量分析装置
用途 数量 装置名 装備
網羅的メタボローム解析 3 Synapt G2-Si (Waters),
QExactive
(ThermoFisher Scientific)
超高速液体クロマトグラフ
標的メタボローム解析 5 Xevo TQ-S (Waters),
Xevo TQ-XS (Waters),
TQ8040 (Shimadzu)
超高速液体クロマトグラフ
ガスクロマトグラフ
網羅的メタボローム解析
標的・網羅的プロテオーム解析
1 Orbitrap Fusion
(ThermoFisher Scientific)
超高速液体クロマトグラフ
ナノ流速液体クロマトグラフ

 

アレイ解析

マイクロアレイを用いたSNPジェノタイピングを行う解析設備です。プラットフォームの異なるマイクロアレイ解析に対応するために、複数のシステムを運用しています。それぞれのシステムにラボラトリ情報管理システム(LIMS)を装備し、各実験工程の進行状況を管理して検体の取り違いなどのトラブルを防止するとともに、実験装置の稼働状態を記録するなどして、精度維持に努めています。得られたデータは、遺伝統計学の手法を用いた情報解析や、遺伝子型インピュテーションが行われた後に、ゲノム情報基盤として様々な研究に活用されています。

 

装置名 数量 特徴
GeneTitan 全自動 hybridization and scanner system
(ThermoFisher Scientific)
2 約70万のSNPを搭載したフルカスタムアレイ(ジャポニカアレイ®)を解析するための装置。1台で1週間あたり約800検体のデータ取得が可能。
iSCAN scanner system
(Illumina)
2 ビーズチップタイプのマイクロアレイを解析するための装置。SNP搭載数約250万のOmni2.5アレイ等でのデータ取得に使用。

 

未来型医療創成センター関連施設
クリニカルバイオバンク

未来型医療創成センター東北大学病院個別化医療センターと共にクリニカルバイオバンクを設立して運用しています。東北大学病院の診療の際に得られた血液や組織などの貴重な生体試料を、患者さんの同意を得た上で提供していただき、適切な管理のもとに保管することにより、将来の医療のための研究や、患者さんの治療の選択に役立ててまいります。

 

クリニカルバイオバンクの主な施設
装置名 数量 運用温度 容量
超低温フリーザー 10 -80℃ 液性検体用:1ccサンプルチューブ30万本超
組織検体用:サンプルケース総計4万個超

 

クライオ専用透過型電子顕微鏡

未来型医療創成センターに、AMED-BINDS の支援を受けてクライオ専用透過型電子顕微鏡を設置しています。クライオ電子顕微鏡法とは、生体試料を急速凍結しガラス状の氷に閉じこめ、透過型電子顕微鏡を用いて直接観察する技術で、生体高分子複合体の立体構造を高い分解能で知ることができます。結晶化のプロセスを必要としないため、X線結晶構造解析で困難であった多くのタンパク質の立体構造解析が可能です。

本体の仕様
製品名 CRYO ARMTM 300 II(日本電子株式会社製)
加速電圧 300 kV
電子銃 冷陰極電界放出型電子銃
検出器 直接検出型カメラK3TM(GATAN社製)

詳しくは、クライオ専用透過電子顕微鏡 利用案内 をご覧ください。