河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第67回

健康を支えるタンパク分解システム/機能不全、病気の原因に

2016年12月21日 掲載
石田典子

「タンパク分解」という言葉を知っていますか? 今年のノーベル医学生理学賞受賞で一躍有名となった「オートファジー(自食作用)」は、細胞内の長寿命のタンパク質を分解する仕組みの一つです。これに対し寿命が短めのタンパク質を分解する仕組みは「ユビキチン-プロテアソーム系」と呼ばれます。今回は健康を支えるこの仕組みの話です。
私たちの体は多種多様な細胞からできており、その細胞が適切に増えることで体は成長し、また健康でいることができます。一つの細胞が分裂して二つの細胞が生み出される過程を「細胞周期」と呼びます。細胞周期が正常に回るためには、エンジン役のタンパク質とブレーキ役のタンパク質がきちんと機能する必要があります。つまり、エンジン役とブレーキ役の複数のタンパク質が、それぞれ適切なタイミングで作られて機能し、不要になったら速やかに分解されなくてはいけません。それを可能にしているのがユビキチン-プロテアソーム系のタンパク分解システムです。
「ユビキチン」とは、適切な場所とタイミングのときだけ、不要となったタンパク質に付けられる目印です。その目印の付いたものだけが、「プロテアソーム」という巨大なタンパク質分解酵素によって速やかに分解されます。このシステムは細胞周期のみならず、さまざまな生命現象で働いています。その仕組みが壊れると、がんや神経性の病気などの原因となることが知られています。その原因に作用する薬も開発・認可され、実際に医療現場で使用されています。

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