河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第17回

目の健康維持がもたらす豊かな生活/眼病と遺伝子、関連研究

2014年11月5日 掲載
布施昇男

日常生活において、私たちの身体には、五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を通して実にさまざまな「情報」が飛び込んできます。では、皆さん、それらの「情報」の何%が目から入ってくると思いますか? 約80%と言われます。
現代社会においては情報がどんどん増加しており、目への負担が大きくなってきています。その結果、パソコンのディスプレー操作による視覚障害が問題となってきています。ドライアイに加えて、ディスプレーから発せられる波長の短いブルーライトは、体内時計を狂わせやすく、睡眠などのリズムに関係すると考えられます。上手に、パソコンなどと付き合っていかなければなりません。
2013年には、平均寿命は男性も初めて80歳を超え、男女ともに過去最高を更新しました。平均寿命に比例して、加齢黄斑変性や緑内障といった目の病気が増えています。加齢黄斑変性は、カメラのフィルムに当たる網膜の中心の黄斑という所に異常な変化が起こり、視力低下を来す病気で、近年著しく増加しています。また、緑内障は、高い眼圧(目の内圧)や神経の弱さにより、視神経が傷つけられ視野が狭くなる病気です。いずれも、体質、加齢、環境が組み合わさって発症します。
近年、これらの病気にゲノム(遺伝子)も関連し、個人間の違いの一部が体質、病気のなりやすさと関連していることが明らかとなってきました。われわれは宮城県内7カ所にあるToMMo地域支援センターでの健康調査で、目の健康維持に必要なデータを集めています。目の状態とゲノムの関連を調べ、病気のかかりやすさなどの研究を行います。
生活習慣病への対処などと比べて、つい怠りがちな「目の健康維持」は、豊かな老後を過ごすために欠かすことのできないケアなのです。

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