河北新報 リレーエッセー 医進伝心 第7回

ビッグデータサイエンスとコホート調査/情報の海が医療を育む

2014年6月4日 掲載
長﨑正朗

今、ちまたで使われているスマートフォンは10年前の小さなスーパーコンピューターと同じぐらいの速度で情報処理を行い、それをしのぐ情報の量を保存できます。この例でも分かるように、計算資源の技術革新が価格の低下をもたらし、さまざまな情報を処理、蓄積することが日々、当たり前に行われるようになっています。このように蓄積されている情報をビッグデータと言います。
このビッグデータは、皆さんにおなじみのコンビニエンスストアでも利用されています。例えば、どの季節に、どの場所で、どのように組み合わせて陳列すれば、お客さんが品物を購入してくれるのか。日々の購買履歴を基に、売り上げを増やす方法が具体化されます。
このような情報は集める量を増やすことで、より役立つ知識になる場合が多いと考えられています。
医学の世界もビッグデータを使った予測、予防と無縁ではありません。海外の医療機関では、実際に検診履歴を大規模に集めて、新しい患者がより適切な診断を受け、治療方針を立てる補助ができるような仕組みづくりの研究が進められています。
東北メディカル・メガバンク機構も、コホート調査を通じアンケート情報、生化学的検査情報、血液試料、試料を解析した情報などを蓄積してビッグデータ化し、それを統合解析することによって、より一人一人の体に合わせた治療や予防法を将来的に確立することを目指し研究を重ねています。
集める情報が増えれば増えるほど、プライバシーに関する情報も増えていきます。個人情報とそれ以外の情報を切り分けてできる限り匿名化を担保するとともに、厳重に管理された区画に保存する-。ビッグデータ解析に当たっては、セキュリティーに十分に配慮した利用がますます重要になっています。

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