東北メディカル・メガバンク機構

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  • 東北メディカル・メガバンク機構は小中学生の長期健康調査を行います

    東北メディカル・メガバンク機構は、小中学生の長期健康調査である地域子ども長期健康調査を行います。 本調査は予防医学・疫学部門が担当し、責任者は栗山進一教授です。 調査の実務担当の一員、菊谷准教授(予防医学・疫学部門)と石黒助手(予防医学・疫学部門)にインタビューしました。

    Q1 : 今回、2012年10月より宮城県の一部の小中学生を対象に地域子ども長期健康調査が始まりますが、何を目的として行うのでしょうか?

    菊谷 : 東日本大震災後、疾患の増加が懸念されています。 2004年にスマトラ島で起きた大地震津波の被災地では、震災後何年もたった後に疾患が増加しました。感染症や循環器疾患などが増えたのです。また神戸の震災後はPTSD(心的外傷後ストレス障害)が長期間続くケースが問題になりました。

    東日本大震災の被災地でも、各種疾患の増加が懸念されます。 特に心配されるのは子どもたちです。アレルギーやPTSDの増加が心配されます。また、広汎性発達障害では半数以上の子どもたちは、周囲から見過ごされ、また適切な医療を受けていないとされています。しかし宮城県全体の子どもに対する系統的な健康調査は今まで行われておらず、その実態は明らかではありません。

    地域子ども長期健康調査が行うアンケートによる健康調査は、災害弱者である子どもの疾患が震災によりどれだけ増えているのか、その現状を把握するための資料となります。 病院にかかっておらず、震災後に疾患を悪化させている子どもがいるとしたら、地域子ども長期健康調査を通じて対処したいと願ってやみません。

    石黒 : 今回の長期健康調査で、病気に苦しんでいる子どもを一人でも多く救いたい。そう意義を感じています。

    菊谷 : 疾患を持っている子どもをアンケート調査によって見つけ出すこと。またその子どもを病院での適切な疾患管理と治療につなげること。それを地域子ども長期健康調査で行いたいと思っています。

    Q2 : この調査は、具体的にはどのように行うのでしょうか?

    菊谷 : 小学校二・四・六年、中学校二年の生徒へ学校でアンケートを配り、保護者に記入と郵送をお願いします。

    石黒 : アンケートで患者を見つけ出す疾患には、PTSD、インフルエンザ、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、広汎性発達障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)、一部の先天性代謝異常を含めました。

    菊谷 : インフルエンザは流行する感染症の代表として選び、震災後の感染症への罹患増加の有無を調べるためにお聞きしています。地域子ども長期健康調査は、今年度は山元町、亘理町、岩沼市の4千人が対象です。宮城県内で来年度以降、実施地域を拡大していきます。

    菊谷 : アンケートで所見のあった子どもの保護者には、希望に応じて電話相談を行います。その上で症状が重い可能性のある子ども、あるいは面談が望ましい子どもには、保護者と一緒に東北メディカル・メガバンク機構地域支援センターへ来場をお願いする予定です。

    センターでは保健師や臨床心理士の面談を通じて、利用可能な社会資源への連携や勧奨や子育てに関するアドバイスを行います。治療が必要と判断された場合は医療機関の受診をお勧めします。

    石黒 : 自治体や教育委員会へも、アンケートの集計をわかりやすい形にしてお渡しする予定です。

    菊谷 : また、一人ひとりの体質に応じた予防法の開発や将来の治療法の開発のため、お子さんや保護者の方に後日詳細な検査のお願いを改めてさせて頂くことがあります。この取り組みによって自閉症などに対する理解が進み、治療法が開発されることを望んでいます。

    Q3 : DNAや検査データを調べる事で自閉症の原因遺伝子を解明し、将来的に疾患に対処できるということでしょうか?

    菊谷 : そうです。自閉症の症状を和らげる、もしくは自閉症をなくしていける、そんな道に近づけると思います。

    Q4 : 被災地ではこれまで、子どもを対象にどのような調査が行われていたのでしょうか?

    菊谷 : 震災後、子どもの健康状態の調査はありましたが、いずれも規模が限られていました。今回の地域子ども健康調査は非常に大規模なものになります。

    Q5 : これまでに世界では、子どもを対象として長期健康調査などは行われてきましたか?

    菊谷 : 喘息、アレルギー、生活習慣等について、子どもを対象にした長期的な健康追跡調査が行われていました。 しかし震災と自閉症やADHDの発症の関係はほとんど調べられていませんでした。この研究を東北メディカル・メガバンク機構で行う予定です。

    Q6 : 長期健康調査を行うことは、地域にどんな影響を与えるのでしょうか?

    菊谷 : 長期健康調査は住民支援の事業という面を持つ研究調査です。調査が疾患の発見や健康意識の高まりにつながり、病気が減っていきます。

    以前、岩手県の大迫コホート *1 *2 という長期的な健康調査事業に参加した際にも、健康調査の実施が実際に調査協力者の健康意識を高め、医療費削減や住民健診の受診率増加につながることを目にしました。 この大迫コホートは血圧に焦点を当てていました。しかし血圧に注意することで、病院に行って診察を受ける方が増え、それが契機となって、血圧の面だけでなく他の疾患の早期発見、さらには循環器疾患やがんによる死亡の低下にまでつながったのです。

    このように地域を対象とした長期健康調査には地域全体の健康を増進する面があり、研究者の一方的な調査というわけではありません。だからこそ被災地で健康調査を行うのだと思っています。 スマトラ島沖大地震の後のような疾患増加を東北でくい止めるのは、長期健康調査の実施だと思うのです。多くの人の疾患を早期発見し、妥当な手を打つ事ができるのは、調査研究だと。

    大迫コホートに携わっていた時の私は、元気で健康に生きられる寿命をどうやって延ばすかを考えていました。そして東北メディカル・メガバンク機構の地域子ども長期健康調査では、子どもたちの未来のために、と考えています。

    【2012年8月】

    菊谷昌浩准教授

    01-1東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門准教授。 宮城県仙台市出身。研修医を経験した後、東北大学大学院医学系研究科博士課程から大迫コホートの研究に参加。東北大学大学院薬学研究科に勤務の後、東北メディカル・メガバンク機構で予防医学・疫学部門が実施する地域子ども長期健康調査(責任者:栗山進一教授)に携わる。

    石黒真美助手

    01-2東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門助手。 秋田県出身。東北大学大学院医学系研究科博士課程在学中。 東北メディカル・メガバンク機構で予防医学・疫学部門が行う地域子ども長期健康調査や三世代コホート業務(責任者:栗山進一教授)を補佐している。

    用語説明
    *1 コホート 疫学の研究手法の一つ。 具体的には、ある集団に属する人々に健康調査を行い、その後ある疾患を発症した人達はどんな環境に置かれていたか、どんな生活習慣を持っていたか等の傾向を解析する。 この手法は、疾患の環境要因や遺伝要因を絞り込む研究に用いられる。
    *2 大迫コホート 岩手県花巻市大迫で約二十年以上続くコホート研究。特に血圧の研究がさかん。国際的に高い評価を受け、その成果はWHOのガイドラインにも取り入れられた。

    構成・インタビュアー・原稿 : 影山麻衣子

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